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ふくだぶろーぐ

福田知弘(大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻)のオフィシャルブログです。

都市とITとが出合うところ 第26回 ビデオ×コミュニケーションメディア

「都市とITとが出合うところ」第26回。2016年5月号は、近年、コミュニケーション・メディアとして急速に拡がりをみせている、ビデオについて整理してみよう。

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1605machinami_FukudaFinal.pdf

ビデオの進化

インターネットの普及により、物理的な空間・時間・コストの制約を乗り越えて、遠隔地に住む人々が居ながらにして学習したり、会話したりできるようになってきた。インターネットで扱えるメディア(媒体)は、テキスト(ニュース、論文など)、画像(写真、グラフ、絵など)、音声(音楽、ネットラジオなど)、動画(映画、インターネットテレビ、ウェブカメラの映像など)、3次元仮想空間(VRなど)と多様であり、それらを組み合わせて使用することが多い。本稿では、ビデオ(動画+音声)を使って遠隔で学習したり、コミュニケーションすることを考えてみたい。

ビデオが身近になったのはここ30年ほどであろうか。筆者の経験を紹介すれば、我が家にビデオカメラ(撮影用)とポータブルVHSデッキ(録画用。ナショナル(現・パナソニック)製 NV-3000)がやってきたのは、1981年だったように思う。当時、まだ民生用カムコーダ(ビデオカメラとビデオデッキが一体化したもの)はなく、VHSデッキをビデオカメラと接続する必要があったが、旅行やスポーツ大会で大活躍した。一方、ビデオカメラ、VHSデッキ、バッテリー(付属バッテリーは寿命が短すぎるため、オートバイのバッテリーを使用した)、ミニTV(液晶ディスプレイはビデオカメラに付属しておらずファインダーを長時間覗くことはできないため)を合わせると重さは10kgを優に超え、これらを携えながら撮影するのは大人でも大変であった。それでも、それまでの8ミリフィルムと比べると画期的であった。何より、限られた専門家のモノだったビデオ機材が家庭に普及し始めたことは、誰もがビデオの撮影者になれ、そして、録画・編集したビデオコンテンツの発信者になれることを窺わせた。

その後、カムコーダは進化していく。記録媒体は、アナログからデジタルへ、すなわち、磁気テープからハードディスクやメモリチップとなり、画質の劣化がなくなった。画面解像度は、NTSC(総画素数640×480=307,200)、フルHD(同1920×1080=2,073,600)、そして、4K(同3840×2160=8,294,400)と、向上した。また、ビデオカメラの小型化・軽量化が進み、手のひらサイズ(重さ約300g)、ウェアラブルカメラ(同約45g)が出回っている。

さらに、パソコンがインターネットに接続されるようになると、Youtubeなどのインターネットの動画共有サイトが始まり、ビデオデータの投稿と共有が始まった。筆者がビデオをYoutubeに初投稿したのは2007年、今から9年前のことである。ただこの頃は、デジカメのビデオ機能やビデオカメラで撮影したビデオデータを、パソコンに一旦コピーしてから、インターネットに投稿する必要があり、今よりも手間がかかっていた。

その後、スマートフォンスマホ)やタブレットが登場した。ビデオカメラが当たり前のように付いており、撮影したビデオは即座にインターネットに投稿・共有できるようになった。尚、ビデオを作成する方法には、ビデオカメラで撮影する以外に、PCやスマホの画面をキャプチャする方法もある。撮影したビデオの編集作業は、主に、PC上で行われてきたが、近年では、MixChannel(ミックスチャンネル)のように、スマホで編集可能なアプリも出現している。スマホの大画面化、通信環境の高速化により、スマホでビデオを利用する状況はますます整えられている。このように、ビデオとインターネットの親和性はぐっと高まっており、誰もがビデオの撮影者、発信者、受信者になれ、ビデオを介した学習やコミュニケーションが可能になってきたといえる。

次節では、インターネットに投稿されたビデオの利用について見てみたい。切り口は、発信者と受信者の関係(片方向か、双方向か)、時間軸(オン・デマンドか、リアルタイムか)の2軸とした。

 

遠隔地でのビデオ利用(片方向)

「片方向」は、テレビのように、発信者と受信者の役割が分かれ、受信者である視聴者は概ねビデオを視聴するだけの使い方である。

「片方向×オン・デマンド」は、Youtubeのように予め投稿されたビデオを視聴者が好きな時間に視聴できる。学習上のメリットでいえば、受講者は、個人の興味や習熟度に応じて学習を進めることができ、内容を聞き逃したとしても巻き戻せるし、聞きたくない箇所は早送りできる。教師は、同じ授業を何度も繰り返す必要がなく、標準化された授業を提供できる。個人的に特に便利になったと感じるのは、ソフトウェアの操作マニュアルがビデオで提供されるようになったこと。以前は、マニュアル本に沿って操作を覚えようとしたが、どこかでつまずくとその先に進めず困った。また、チューターに一通り説明を受けた後に自分で操作しようとしたが忘れてしまったり、メモを見ても思い出せないことがあった。

講演ではTED(Technology Entertainment Design)が有名である。TED Conferenceは、学術・エンターテイメント・デザイン分野などの著名な人物がプレゼンテーションを行うもので、講演会場には大勢の聴衆が詰めかけ、face-to-face(FtoF。対面型)方式で講演会は催される。一方、講演終了後には、インターネット上で動画配信されるため、遠隔地での視聴が可能である。筆者の経験では、「都市の針治療」スペシャル版として、明治学院大学 服部圭郎教授と対談させて頂いた模様がインターネット上に配信されている(図1左)。

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図1 左 片方向の例: 「都市の針治療」スペシャル(http://www.hilife.or.jp/cities/?p=859

「片方向×リアルタイム」は、ニコニコ生放送Ustreamのようにライブストリーミングを指す。例えば、観光地、街なかスポット、コンサート、授業、講演、国会中継天体観測の生放送を遠隔地で視聴する使い方である。

尚、YoutubeやTEDのサイトでは、視聴したビデオに対して掲示板にコメントを投稿できるため「双方向」といえなくもない。しかし、ビデオコンテンツ自体は情報伝達の意味合いが強く、次節で紹介するようなビデオ自体にコメントを書き込む機能とは一線を画すため「片方向」に分類した。

 

遠隔地でのビデオ利用(双方向)

「双方向」とは、テレビ会議や会話のように、発信者と受信者の役割が相互に入れ替わる状況を指す。

「双方向×オン・デマンド」は、投稿されたビデオに視聴者がビデオ上にコメントを直接付けるサービスが該当しよう。このサービスは、ビデオが再生されるタイミングに合わせてコメントを投稿(その後、表示)することができるため、ビデオコンテンツのある部分に対するコミュニケーションが可能だという意味で「双方向」に分類した。学習用ビデオでいえば、教師が発信するビデオに対して、受講生が「ここの説明がわからない」といった質問をビデオ上に付記することで、受講生の不明な点を説明したり、受講生のわからない箇所を教師が把握できるメリットがある。

「双方向×リアルタイム」は、SkypeGoogle ハングアウトのようなビデオ通話サービスを使って会議や会話を行うものである。教育学者である英・ニューカッスル大のスガタ・ミトラ教授(Prof. Sugata Mitra)は、自己学習環境SOLE(Self Organised Learning Education)の構築のため、「クラウド上の学校」という学習実験室をインドに作ろうとしている [1]。これは、子どもたち同士が協力して自由に学習できる環境であり、クラウド上のお婆ちゃん達(教師役)が子供たちを励ます役割を担おうとするものである。筆者の経験では、香港中文大学が開催したワークショップで講演をすることになった時に、移動時間とコストの制約のため、香港の人々に、大阪大学の研究室からSkypeで講演させて頂いた。また、ワークショップ「自主簡易アセスの取組みを広めよう」では、東京と大阪をテレビ会議システムで接続して、情報提供、ディスカッションをさせて頂いた。その場では、2015年2月~4月に本稿で紹介させて頂いた、クラウドVRも使用して、3次元仮想空間を共有しつつ東京と大阪で自主簡易アセスの可能性について議論した(図1右)。

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図1右 双方向の例: 「自主簡易アセスの取組みを広めよう」(http://assessment.forum8.co.jp/assessment/php/home.php

 

おわりに

期待を込めて課題を記しておきたい。ビデオの視聴にはビデオの長さと同じだけの時間が必要となる。1時間のビデオを見るには1時間が必要となる。映画作品ならまだしも、コンテンツによってはできるだけ短時間で概観したい場合や目当ての箇所だけ見たい場合がある。音声を聞きつつ早回しで視聴するならば、ビデオの再生速度を上げたとして2倍速迄が限度であろう。この視聴時間の壁を如何に取り除けるか。例えば、ビデオの映像カットや発話内容を直接検索することができれば、ビデオコンテンツをもっと効率的に利用できるかもしれない。

「双方向×リアルタイム」の場合には、FtoFの会議と比べて、まだ自然体で話すことができないように思える。どうやらテレビ会議システムに気を遣っているようだ。無音状態になるとインターネットが切れたのではないか、ビデオ画面に変化がないとシステムがフリーズしたのでは、と不安になる。ビデオ画面の中にメンバーが納まるよう座席を配置し直したり、スピーカやマイクの音量、照明環境にも配慮が必要である。利用シーンの見極めやユーザが慣れていくべき点を含め、今後の改善に期待したい。

参考文献
[1] School in the Cloud: https://www.theschoolinthecloud.org/ (参照 2016年3月9日)

大阪府建築士事務所協会「まちなみ」2016年5月号)