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都市とITとが出合うところ 第73回 テレワーク(2)

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図1 上:赤ペン添削の例。尚、元原稿より切り貼りなどの加工を施してある。下:AI-OCRのイメージ。紙に書いた手書き文字をデジタルの文字コードに高い精度で変換される。

双方向性の確保

テレワークを進める場合、話し手と聞き手の間の、双方向性の確保は重要である。Web会議やオンライン授業で、講師などの話し手が説明した内容に対して、聞き手側に質問や意見があれば、

  • 直接発話して質問や意見する。
  • チャット機能で、文字を入力してやりとりする。

の方法がある。これらはライブとしての使い方である。

以降は、一定の時間をかけて、やりとりする方法を考えてみたい。

テレワークでの添削

テレワーク(遠隔同士)で、提出された書類を添削して、提出者に返却することを考えてみよう。筆者の場合、学生が書いた論文やレポートの添削がこれにあたる。筆者の主な方法は以下の通り。

  1. 学生が論文などの原稿を書き、MSワードかPDFでメール送信してもらう。
  2. 筆者が受信してプリントアウト。赤ペンで紙の上に直接書き込む(図1上)。
  3. 添削した原稿をスキャンして、PDF化。
  4. 赤ペンで書ききれない、総合的な意見や参考URLと共に、メールで返信。

1) について。多数の受講生を同時に担当する場合、再提出など何度もやりとりする可能性もあって、メールで送受信すると受信回数が増えてミスも発生しやすくなるため、クラウドドライブ(DropboxGoogleドライブなど)を共有して期限内に提出してもらう。

提出時期までに、ファイル名のつけ方(ソートがしやすいように「学生番号+氏名.拡張子」で統一するなど)や、提出を終えたら確認メールを送ることなどのルールを決めておくと確実性は上がり、後作業が楽になる。

また、簡単なレポートなど、ファイルではなくテキストのみを提出してもらう場合はGoogleフォームなどのWebアンケートシステムで提出してもらうこともある。

2) について。まずは、紙で印刷する必要性について。印刷はツーインワンで行うことが多い。元原稿の2ページ分をA4 1ページに印刷する方法である。こうすると、原稿の全体が把握しやすい。最近は、PCのディスプレイが大型化していて複数のディスプレイに表示することも標準でできるため、ディスプレイ上で原稿全体を一度に眺めることもかなりできるようになった。縦型にすれば、原稿やプログラミングのコードは見やすい。しかし、添削の場合には、次に述べる、原稿に直接書き込める機能が必要という点で、印刷したい。

MSワードには、コメントを付ける機能がある。これを使えば、原稿の完成という最終的な目標達成としては時間短縮になることが多い。だが実際の作業状況としては、原稿をしっかり読むという感覚が得られないことや、添削者側である著者自身がどんどん書き込んでしまうことに疑問を感じている。書き込みを受け取った学生にとっては、(長い目でみて)学習につながっているのだろうか。便利すぎる、わかりやすすぎると、聞き手は受け身の姿勢が大きくなって、わかった気になってはいるが、身についていないのではないだろうか。返却された添削を読み返して考えるためには、一定の時間が必要なのではと思う。

なので、赤ペンで添削して返却している。尚、このような考えで赤ペン添削を採用している理由を学生にはできるだけ伝えるように心がけている。

また最近は、タブレットなどタッチパネルディスプレイであれば、コンピュータ上の原稿に手書きするという方法もある。現状、筆者は残念ながら、タッチペンで書き込む方法は自然な感覚ではなく、紙に書き込む方法を好んでいる。ディスプレイの両側で、ペンとファイルの表面が離れていて直接書く感じがしていないことや、書く際の反応速度など、機械に気を遣ってしまう。

3) について。ドキュメントスキャナ(ScanSnapなど)が何より早い。もしなければ、スマホで撮影した画像(PDF化してもよい)をメールに添付して送る。

手書き文字の認識

テレワークに限らないが、上述した2–3) のように手書き文字をデジタル化するとまずは画像になる。人間が見ると「文字」であるが、実際は画素(ピクセル)の集まりであり、PCは文字だと理解できていない(ラスターデータ)。PCが文字であると判別できるためには、デジタルの文字コードに変換する作業が必要。

このため、OCR(光学的文字認識)という技術があり、印刷された文字をイメージスキャナやデジタルカメラで読み取った画像データから、デジタルの文字コードに変換する。文字コード化できれば、検索、再利用、さらにはテキストマイニングも可能となるため、大量の原稿に含まれる語句のチェックや傾向を把握することが、より容易になる。

さらに近年では、手書き文字の認識精度を向上させるため、AI技術のうち、特に深層学習(ディープラーニング)を用いたAI-OCRが急速に普及している(図1下)。

現状ではAI-OCRを使って100%の認識は難しく、変換された結果を人間が点検する作業が必要である。が、これまでのように人間が手書きの資料を読みながら文字を手入力することを思えば、格段に効率的である。また、手書き文字のパターンを増やし、学習を繰り返していくことで、認識精度は向上していく。

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/2007machinami_FukudaFinal.pdf
(一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2020年7・8月合併号)