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都市とITとが出合うところ 第75回 CAADRIA 2020オンライン国際会議(1)

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図1 CAADRIA 2020 バーチャルカンファレンス参加 機材

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図2-1 CAADRIA EXCO(実行委員会)

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図2-2 司会を担当したセッション Session 1-B: Digital Fabrication and Construction 

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図2-3 Sasada Prize(大阪大学 笹田剛史教授の功績を称えて2007年に創設されたCAADRIA最高位の賞)

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図2-4 発表者として参加者したVRセッション Session 4: Virtual/Augmented/Mixed/Interactive Environments

25周年

CAADRIA(Computer-Aided Architectural Design Research in Asia)は、建築・都市の計画・設計分野のIT応用に関する研究・教育に関するアジア・オセアニア地域の学会。アジア・オセアニア圏の大学が順番にホストを務め、世界中からの参加者を迎え、カンファレンスとワークショップを毎年開催している。設立は1996年、今年のCAADRIA 2020は25周年を迎えた。25年前と比べると、アジアの発展、ならびに、建築・都市設計のコンピュータ応用に対する注目度は隔世の感があり、論文投稿や参加者の数は飛躍的に伸びた。我が国は・・・

翌年のホストは、遅くとも前年度のカンファレンスで決まり、1年間準備を進める。2019年4月にウェリントンで開催されたCAADRIA2019で、2020年のホストはスリランカに決まっていた。が、その後、連続爆破テロが起こってしまい、翌々年のホストに立候補していたバンコク・チュラロンコン大学が前倒しで引き受けてくれることになった。

そして、2020年4月7—10日の開催に向けて準備が大詰めを迎えようとしていた、1月末ごろから新型コロナウィルスの影響により雲行きがどんどん怪しくなっていった。国際会議の場合、遅くとも開催2か月前には海外からの参加者は飛行機やホテルの手配を始めるから、ソワソワし始めるころである。

理事会とホストが議論し合い、まず、2月11日には、8月への延期を決定した。次いで、4月上旬には、フルオンライン開催を決定した。個人的には、意思決定時期は丁度よいタイミングだったと思う。そして、オンラインならではの工夫を試みた。

論文発表の工夫

通常の対面型で集まるカンファレンスの場合、論文発表者は、10~15分間、自らの研究成果をパワポなどでプレゼンする。その後、司会者や聴衆(聞き手)とディスカッションを数分間行う。5~10編の論文発表をひとつのセッションとして、複数のセッションが同時並行に進められる(パラレルセッション)。

聞き手は、論文を事前に読むことはできるものの、プレゼン内容はプレゼン時間に初めて聴くため、プレゼン内容を短い時間で理解しなければならないことが課題である(それでも国際会議では質問がバンバン飛び交うのだが)。

一方、オンラインカンファレンスの場合、参加者はウェブにアクセスすることが前提となる。そのため、今回の工夫点として、カンファレンスがはじまる20日前を〆切として、論文発表者はプレゼンテーションを録画したビデオを提出して(最長12分)、ホストは全てのビデオをパスワード付きで掲載して、カンファレンス期間中、参加者は自由に録画ビデオを閲覧できるようにした。

各セッションは45分間であり、それらのプレゼンビデオを踏まえて、ディスカッションで進めることが基本となったが、詳細は司会に任された感じであった。

司会を担当したセッションの工夫

司会を担当したセッションの45分間をどう運営するか、正直悩んだ。まず発表者は12人である。割り算すると、一人の持ち時間は4分足らず。自己主張の強い海外の人々にとってかなり短い(笑)。

また、事前にプレゼンビデオを視聴できるとしても、発表者、一般参加者が全てのビデオを事前に視てくるだろうか?よく考えてみると、ほとんどの参加者は、発表者の研究成果を知らないままにセッションに参加してくるのではと予想できた。そこで、発表者に事前にメールをして、研究成果を端的に紹介するスライドを限定1枚で作成してもらい、筆者に送ってもらった。提出してこない発表者は、筆者の方で簡単に作成した。   

司会の方で全てのスライドをひとつのパワポに取りまとめて、セッションの最初に、発表者が順に、研究内容を90秒で紹介してもらった(さすがに、90秒でチーンと、ベルを鳴らすことは止めた)。パワポをまとめたのは、画面共有の手間を省くためである。

この一回り目に、全員が短時間で「顔見世」することで、セッション全体が落ち着いたように感じた。アイスブレイクにもなったように思う。

続いて、司会の方から、発表者に対する共通の質問を出し、全員が順に回答した。一般参加者から、ウェビナーのQ&Aボックスに質問が投げ込まれたので、

発表者に回答してもらった。ほぼ、これで45分であった。司会者・発表者にとって45分間はアッという間であったが、学会では、このような45分間のセッションが丸一日続いた。一般参加者の立場では、一つのセッションは45分間は適当であり、長くても60分間までだと感じた。

PDF:  http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/2010machinami_FukudaFinal.pdf
(一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2020年10月号)