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ふくだぶろーぐ

福田知弘(大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻)のオフィシャルブログです。

都市とITとが出合うところ 第21回 CAADRIA2015×大邱(2)

「都市とITとが出合うところ」第21回は5月に韓国・大邱で開催されたCAADRIA2015の2回目となります。

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1512machinami_FukudaFinal.pdf

CAADRIA2015での発表内容

 前回は韓国・大邱で開催されたCAADRIA2015の学会運営の様子を紹介した。今回は、CAADRIA2015での筆者らの発表内容を概説しよう。発表タイトルは「Development of a Kinematic Physical Model for Building Volume Simulation:建物ボリュームシミュレーションのための動的な模型の開発」である[1]。

研究の背景と目的

 建築や都市の三次元空間を表現するために模型などの物質的なモデルやVRなどの仮想的なモデルが使用される。模型は、複数のユーザが任意の視点から同時に検討可能なこと、設計対象やその配置を直接触れながら操作できることなどの利点がある一方で、歩行者視点からの検討が困難であること、縮尺や模型材料による表現の限界などの課題を抱える。VRは、歩行者や運転者のアイレベルからの検討が容易であること、人や車などの動的な表現が可能であることなどの利点がある一方で、ユーザが同時に検討可能な視点は通常1ケ所に限られること、直接触れることができないなどの課題を抱える。このように、模型とVRは異なる特徴があり、現状では検討内容やプレゼンの目的に応じて併用されている。

 一方、模型とVRの両者を使用すると、それぞれを別工程で制作する必要があり、手間とコストがかかる。また、検討プロセスで設計変更が発生した場合、模型とVRの修正作業を迅速にすることは困難である。この問題解決のために、3次元仮想モデルから模型を出力する3Dプリンターが実用化されているが、現状での出力速度は高さ方向に約30mm/時であり迅速な出力は困難である。

 そこで本研究は、模型とVRをデータレベルで同期させながら、3次元仮想モデルの内容に応じて、様々な規模や高さの建物ボリュームを動的に表現するシステムの開発を目的とした。動的模型の設計と制作には、機械工学、電気工学、建築工学の知識を集めながら実施した。

動的模型の概要:ハードウェア

 研究目的を達成するために、個別に高さが変更可能なロッドが密集する動的模型を構築した(図1-3)。

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図1 動的模型のスケッチと実装に使用したデバイス

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図2 動的模型システム:(左上)平面図;(左下)立面図;(右上)全体像;(右下)ボリューム表示例

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図3 ハード詳細:(左)ロッド昇降用モータ列部分詳細;(右上)モータ駆動回路図;(右下)フレームとストッパー

 ロッドはグリッド状に配置され、平面上の各位置の高さを決定する最小単位となる。動的模型はPCと接続されており、3次元仮想モデルより動的模型の各ロッドの位置に対応する高さを算出して、その高さまで各ロッドを昇降させることで、都市のボリューム模型を表現する。

 動的模型は、出力ボード、端子台、ロッド昇降用モータ列、ラックギア、ストッパー、電動スライダ、ロッド、ソフトウェアで構成される。出力ボードはPCに接続されており、端子台を介して出力ボードと電動スライダ、ストッパーと接続されている。ロッドの昇降は、ロッド昇降用のモータ列ごとに一列ずつ行われる。昇降が完了した列のロッドはストッパーによって順次固定される。

ロッド昇降用のモータ列とストッパーにはステッピングモータを採用した。ステッピングモータは、ステーターと呼ばれる複数の電磁石、ローターと呼ばれる永久磁石で構成される。ステーターに電圧をかけて帯磁させるとローターが吸着されて、回転する仕組みである。ステーターを帯磁させる順番は、パルスと呼ばれる周期的な電圧変化で行われる。パルスの波形によって、正転、逆転させることができ、また、1パルスあたりの回転角が決まっているために、パルスの回数によって正確に制御できる。さらに、前述したパルスによる回転制御に加えて、ステーターのうちの一つの電磁石に通電し続けることによってローターがステーターに固定されて、ブレーキが発生する。

プロトタイプシステムとして、一辺20mmのロッドを、ロッド一列あたりのロッドの本数を15本、ロッド列を7列として、計105本配置した。

動的模型の概要:ソフトウェア

 開発したソフトウェアは、ロッド高さ算出プロセス(3次元仮想モデル入力後、各ロッドの中心座標での高さを算出)とロッド昇降プロセス(ステッピングモータを駆動させてロッドを昇降)がある。

 ロッド高さ算出プロセス:まず、VRデータに記述されている各オブジェクトの最上面Ftを抽出する。次に、各オブジェクトの最上面Ftと、ロッド中心RRodXRodY)との内外判定を行い、ロッド中心Rが最上面Ftの内側に存在するすべてのロッドを抽出して、それらのロッドを上昇させる高さHとして最上面Ftの高さを取得する。最後に、Hを、ステッピングモータの1ステップでの上昇量Hsで除して、モータを駆動させるステップ数を算出する。

 ロッド昇降プロセス:まず、ロッド昇降用モータ列を電動スライダの原点に平行移動させて、初期化する。そして、ロッド昇降用モータ列がロッド列の真下に位置するようにする。次に、ステッピングモータをロッド高さ算出プロセスで算出されたステップ数を回転させてロッドを上昇させた後、ロッドが落下しないようにステッピングモータに通電し続けてブレーキを発生させる。さらに、フレームに取り付けられたステッピングモータでストッパーをスライドさせて、ロッドを固定する。そして、モータのブレーキを解除する。最後に、ロッド昇降用モータ列を次のロッド列に平行移動させる。以上の処理を各列に対して実行する。

動的模型の評価:方法

 プロトタイプシステムを評価するため、高さ4mから10mの建物8棟が建ち並ぶ仮想街区(街区サイズ:38m×18m)のVRモデルを動的模型に入力して、精度検証と出力時間の測定を実施した。

 精度検証は、出力する模型の縮尺率を1/100として、平面上の位置と高さについて理論値と実測値とを比較した。平面上の位置検証は、理論上導かれる建物四隅の座標のうち、水平・垂直方向それぞれの最大・最小値を理論値として、対応するロッドの隅と原点との距離を実測値として比較した。高さの検証は、上昇した全てのロッドに対して、理論値と実測値との差の絶対値を算出した。

 出力時間の測定は、ソフトウェアを起動してから、7列目のストッパー用ステッピングモータが動作を停止するまでの動作を3回実行して、その所要時間をストップウォッチで計測した後、平均を算出した。

動的模型の評価:結果とまとめ

 1/100で出力した結果、平面上の位置誤差は最小0mm、最大25mm、平均7.90mmであった。ロッドの一辺が20mmであり、VRデータ面とロッドとの内外判定にロッドの中心座標を用いたことから妥当な値であると考えられるが、従来の模型と比較すると誤差は大きい。今回はモータ等の寸法の制約からロッド寸法を20mmとしたが、従来の模型の表現に近づけるためにはロッドをより細くする工夫が求められる。

 高さ方向の誤差は、最小0mm、最大5mm、平均は1.17mmであった。実スケールに換算すると最大50cm、平均11.7cmの誤差が発生することになる。1mm程度の誤差は人間が模型を制作する過程で発生する誤差と同程度であり、設計の初期段階で都市ボリュームを把握する際の大きな障害とはならないと考えられる。

 出力時間は2’00”3であった。開発した動的模型は、短時間で出力可能であることが確認できた。

 今後は、ロッド寸法をより小さくできるような機構の検討が必要である。さらに、ボリューム表現のみならず、立面情報を含むより高度な表現が可能なシステム構築を目指したい。

参考文献

[1] Tomohiro Fukuda, Toshiki Tokuhara, Nobuyoshi Yabuki, Development of a Kinematic Physical Model for Building Volume Simulation, Proceedings of the 20th International Conference on Computer-Aided Architectural Design Research in Asia (CAADRIA2015), 241-250, 2015.

大阪府建築士事務所協会誌「まちなみ」2015年12月号

 

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