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都市とITとが出合うところ 第94回 みなとテラス(境港市民交流センター)オープン

写真1 みなとテラス(境港市民交流センター)外観

写真2 みなとテラス(境港市民交流センター)設計段階VRと完成写真

みなとテラス

7月10日、鳥取県境港市に「みなとテラス」がオープンした。「市民交流センター」「市民図書館」「防災」の3つの機能を併せ持つ複合施設である(写真1)。

筆者は、事業者である境港市との共同研究により、みなとテラス(境港市民交流センター)のVR(仮想現実・人工現実)を設計段階に作成して、市民が完成前に設計内容を体験する機会を提供してきた。 

境港市民交流センター検討用VR

境港市民交流センターは、設計当時、ホール、図書館、会議室、福祉、防災機能が計画されており、延べ床7,000平方メートルに及ぶ市民交流センターの設計内容の全体や細部について、図面やパースだけで関係者が理解するのはかなり困難である。運営者と利用者の立場から具体的に検討していき、必要であれば早い段階で修正しなければならない。設計内容をわかりやすく理解できるツールが求められた。

そのため、設計がほぼ固まった段階で、VRを作成し、市民交流センターを3次元仮想空間でバーチャル体験できるようにした。表現内容としては、設計内容のレビューを目的としているため、図書館では書籍を表現していない。

それでも、建設プロジェクトの3Dモデルはデータ量が大きくなりがちで、VRを操作するにはGPU付きのPCが必要になるが、ハイスペックのPCをみんなが持っているわけではない。PCの台数が限られると、VR体験できる機会はおのずと限られてしまう。しかしやはり、手軽にVR体験したい。

自分のスマホVR体験できるようYouTubeにアップ

このジレンマを解決するため、関係者が自分のスマホVRを体験してもらえるよう、VRデータから360度パノラマ動画を作りYouTubeにアップした(写真2)。

360度動画ゆえ、VRのカメラパスに沿った体験となるが(言い換えれば、3次元仮想空間を自由にウォークスルーできるわけではない)、完成前に市民交流センターを好きな角度でバーチャル体験することができる。スマホを紙のHMDに差し込めば、立体視することもできる。

おわりに

境港市では、今回の市民交流センター建設プロジェクト以前に、水木しげるロードリニューアルプロジェクトでVRを活用されてきた(都市とITとが出合うところ 第36回第37回第38回第51回)。関係者は、VRとはどんなもので、どこに使えそうか、肌感覚を培われてきた。

そして、市民交流センター建設プロジェクトでは、その経験を踏まえてVRを使いこなされ、より良いプランとすべく、事業者と設計者、運営者により、数多くのミーティングが持たれた。中でも、図書館はオープン前から市民有志により「境港市民図書館応援団(仮称)」が組織され、より充実した運営を目指しているそうである。

境港市民交流センターVRの詳細は、拙著「都市と建築のブログ 総覧」もご覧いただきたい。