2014年4月からスタートした「都市とITとが出合うところ」は、9年目の春を迎えることになりました。いつもお読みいただき、ありがとうございます。
本年度もどうぞよろしくお願いいたします。
第90回は、「中之島で見つけた片想いの橋は今・・・」をお届けします。
ダイビル本館
中之島・田蓑橋(たみのばし)の南詰には、「ダイビル本館」という高層ビルが建っています。初代の旧ダイビル本館(以降、旧ビル)は、1925年(大正14年)に完成しました。当時は、西日本一の規模だったそうです。
二代目となるダイビル本館(以降、新ビル)は、歴史や環境に配慮しながら、2013年(平成25年)に再生されました。
低層部には、旧ビルで使われていたレンガや石材が、旧ビルの解体時に手作業で取り外され、新ビルで再利用されています。これは、中之島の歴史を継承するとともに、廃棄物の排出抑制と省資源化を図る取組みです。「CASBEE(キャスビー)」という、建築物の環境性能を評価する制度で最高ランクの「S」を取得され、「CASBEE大阪 OF THE YEAR 2013(現・おおさか環境にやさしい建築賞)」の最優秀賞も受賞されました。
中央玄関の半円アーチの上に飾られた「鷲と少女の像」、ギリシャ風彫刻が施されている1階正面の列柱など、旧ビルの材料が再利用されたり、新しい材料も使われたりしているそうですが、見分けるのは至難の業です。
中之島四季の丘
さて、新ビルの再生に併せて「中之島四季の丘」が整備されました。たくさんの花や樹木が植えられて、都心の貴重な緑となり、四季折々の表情を醸し出しています。カーブを描いたスロープを上りながら、時おりふり返ってみると、大阪都心の風景が目に飛び込んできます。
数年前のこと。四季の丘の頂上にたどり着くと、真ん中あたりで途切れた橋がありました(写真1)。
橋はふつう、こちら側と、あちら側を結ぶために架けられます。なので、勝手ながら、「片想いの橋」と呼んでいました。
年月が経ち、「片想いの橋」はようやくつながりました。西側に完成した、大阪中之島美術館が2022年2月2日にオープンしたためです(写真2)。
街を歩いていると、このような「片想いの橋」に出会うことがあります。しばらくは「片想い」でありながら、「こちら」が工事をしている内に、将来の「両想い」を期待して橋を計画しておかないと、「あちら」の工事がはじまったら架ける場所がなくなってしまうかもしれない。計画したとしても、ずっと「片想い」かもしれませんが・・・
このような「関係のデザイン」は本当に難しい。
関係のデザイン
大阪中之島美術館へ「両想いとなった橋」を渡ると、橋の終点でちょっとした気遣いを発見しました(写真3)。「関係のデザイン」と言えるかもしれません。
美術館の敷地側には黒いボックスが置かれてあります。オモテ面(美術館側)は、美術館の案内図、デジタルサイネージ、自販機が入っているのですが、そのウラ面(橋側)には、「大阪中之島美術館」とデザインされたサインが描かれてあります(写真3)。
ガラス越しで少々見づらくはあるのですが、「両想いとなった橋」を渡ってくる来場者を意識して検討されたのだろうと感じました。
このような場所にはよく、あとで気づいた運営者側が、貼り紙サインをペタペタと貼られ、景観的に残念な結果になったりしています。