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福田知弘の公式ブログです。

都市とITとが出合うところ 第83回 リアルに近いWeb会議システム

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Spatial.Chatで実施した、VRワークショップの様子。画面に表示されている小さな円は参加者であり、自由に移動できる。

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Gather.townのインターフェース。参加者は矢印キーで上下左右に移動する。カーペットの上にソファが置かれている空間はプライベートエリアである。

もっとリアルな雰囲気へ

ZoomのようなWeb会議システムは、参加者がオンライン会場に集まり、ひとつの話題について話しあうことはできるものの、複数の話題を同時並行で話すことは難しい。ブレイクアウトセッションという個室に入れば、それぞれの話題を話しあえるが、ほかの個室の様子がわからない。

現実世界でのワークショップや懇親会などのイベントは、多くの人々の会話が同時並行に進み、話すメンバーが時間とともに入れ替わり、隣の会話が少しは聞こえ、会場を自由に移動し、参加者全員にスピーチしたりと、出会いと会話のパターンが様々である。このような環境はオンラインでできないだろうか。

 

リアルに近いWeb会議システム

このようなニーズから、以下のようなリアルに近いWeb会議システムが増えている。

参加者は、空間を自由に移動できる。今回紹介する空間とは、3次元の立体のように見えるが実は2次元平面なので、操作は簡単である。例えば、左ボタンのドラッグで参加者自身を移動させ、中ホイールで画面全体をズームイン・アウトする。

参加者の声はユーザー同士の距離に応じて強弱するため、近くのユーザーとは会話できるが、遠くのユーザーとはできない。実際の感覚に近い。

ZoomなどのWeb会議システムとの共通機能として、画面共有、画像やビデオファイルの共有、空間全体へのアナウンス(メガホン機能)、チャットがある。

 

オンラインワークショップ

建設ICTマスター養成講座(厚労省「令和元年~2年度 教育訓練プログラム開発事業」)の一環で、VRワークショップをSpatialChatというWeb会議システムで実施した(主催:(株) フォーラムエイト)。

参加者は、津波避難、杵築(大分)、倉敷(岡山)、南砺(富山)、佐原・潮来(千葉・茨城)のVRモデルを事前に選ぶ。VRモデルごとに計6グループを作った。

Spatial.Chatの背景画像には、6グループのエリアと全員集合用のエリアが描かれてある。参加者は、グループごとにわかれて、各自のPCにインストールしたVRソフト・UC-win/Roadを使いながら、VRモデルを編集しつつ、VRプレゼンテーションを作成した。筆者やVRエンジニアも参加しており、参加者はVRソフトを画面共有して、わからない点などのサポートを受けた。

最終プレゼンは、全員が聴講できるよう、メガホン機能を使って空間全体にアナウンスしながら行った。

Spatial.Chatを使うことで、チーム内での協議だけでなく、チーム外の参加者とも、いつでも、どこでも、コミュニケーションできたようである。有意義なオンラインVRワークショップとなった。

 

RPG風のWeb会議システム

Gather.TownというWeb会議システムは、レトロなロールプレイングゲームRPG)の画面である。

まず、先述した機能は概ねカバーしている。さらに、椅子と椅子の間などにプライベートエリアがあり、その中の会話はエリア外からは近づいても聞こえない。また、ホワイトボードなどのツールが用意されている。参加者自身は踊ったり、自分自身を半透明化して障害物をすり抜けたりとゲームのキャラクターのようにふるまえる。このような機能は、会話を活発化させ、発想を膨らませることができるだろう。

ルームは、オフィスやパーティスペースなどがデフォルトで用意されている。また、背景画像を用意し、家具や観葉植物などのアイテムをマス目に沿って配置することで、懐かしい空間や憧れの空間など、自分だけのオリジナルルームを作成することもできる。

2Dマップとユーザーの動きがリンクしていることや、プライベートエリアやアイテムを配置することで、従来のWeb会議システムよりもリアルに近い空間で、ワークショップや懇親会などのイベントに参加することができる。

 

(一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2021年7・8月合併号)