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福田知弘(大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻)のオフィシャルブログです。

都市とITとが出合うところ 第39回 情報処理教育プログラム (1)

高度な情報処理教育の取り組み

ICT(情報通信技術)革命の波は建築分野にも押し寄せている。ICT利用を基本とした建築計画がなされ、手書き作業がコンピュータ化され、さらに、ヒトが行う入力作業は自動化されつつある。建物には多様なセンサーが取り付けられ、ビッグデータが蓄積されている。建築物の大規模化、複雑化への対応、業務においては、情報化、国際化、効率化、高付加価値化への対応のために、情報の活用、ICTの開発と応用は、ますます重要になってくるであろう。

大学教育の現場に立って10数年が経とうとしているが、赴任以来、学部学生の教育の段階から、高度な情報処理教育プログラムを提供することを心がけてきた。若い頃にひとつでも多くの最新技術に触れておくことは何より大切であること、プログラミングは論理的思考力のトレーニングになることが主な理由である。また、コンピュータの中身やアルゴリズムを多少なりとも理解しておけば、使用するハード・ソフトに遊ばれてしまうことは減るように思える。

情報処理教育を実施するためには、コンピュータとソフトウェアが必要である。以前は、研究室にあるコンピュータでしか実施できず、研究室に配属された学生や少人数の学部学生を対象とせざるを得なかった。近年、大学に整備されているコンピュータに必要なソフトウェアをインストールしてもらうことで、学科全体を対象とした、より多人数への教育プログラムが可能となってきた。現在の取り組みを中心に、ご紹介しよう。


BIM
ソフトを用いたカフェ設計

環境・エネルギー工学創成演習・実験は、2年生1学期に開講する必修科目である。約80名の受講生が4つのグループ(20人/グループ)に分かれて、4つの演習テーマを12週かけて各3週ずつ演習していく。

テーマのひとつが、環境デザイン演習であり、吹田キャンパス内の敷地(40×30m)にある駐輪場と緑地を改善するため、カフェを含む施設をBIMソフト(Autodesk Revit)で設計するものである。1週目に現地調査と建物配置計画と新たな駐輪場の設計、2週目に建物の設計、3週目にプレゼンテーションを実施する。

3DCAD/BIM(Building Information Modeling)ソフトを用いた設計演習は、2005年頃より始めていたが、現在の姿となったのは、学部共通のCALL/CAD室にBIMソフトが導入された2010年からであり、今年は8年目となる。受講生の中には、1年生の選択科目でSketchUPを使って建物3次元モデリングを経験した受講生もいるが、全員が受講するのは本演習が初めてとなる。

この演習は、いわゆる芸術的建築を作ることが主眼ではない。環境・エネルギー面も視野に入れた建物のあり方を考察すること、そしてBIMソフトの様々な機能を試行することを狙いとしている。また、当学科の学生は必ずしも建築土木分野に進む訳ではない。しかし将来、どの工学分野に進もうと(プラント、自動車、機械、ITなど)、研究企画や実験設備を自ら考えたり他人に説明したりするために、3次元の図を描くことは普遍的に要求されるスキルであり、そのための演習とも捉えている。下記は演習内容である。

1. Revitの自作チュートリアルで教員と進める内容

  • カフェ、厨房、トイレ、倉庫を含む、建物の定義方法(1階のみ)
  • 平面図、立面図、断面図、パースの作成方法

2. チュートリアル後、受講生が検討すべき必須内容

  • 2階以上の作成(階段の作成を含む)
  • 建物の使い方や環境・エネルギー面を考慮した、開口部(窓、ドア)、什器の配置

3. チュートリアル後、受講生が検討すべき挑戦内容

  • 天井の作成
  • 壁、床の仕上げ変更
  • 屋根形状の変更

まず、約1時間半、TA 2名の助けを借りつつ、教員側で自作したチュートリアルを順に進める。建物を作るために、通り芯、地面、柱、梁、壁、ドア、窓、床、什器、屋根の定義の仕方、そして、でき上がった建物を操作しながら、パースや断面図の描き方、レンダリング、日影シミュレーション、集計表の作り方、図面をパワポ用に出力する方法を受講生は習得していく。

その後は自習時間であるが、途中、先輩の優れた作品の解説や、チュートリアルでは実施しなかったRevit操作方法の調べ方(ヘルプなど)を紹介する。

演習時間後は、3週目のプレゼンに向けて、研究室に足を運ぶ受講生が多いが、自宅のPCで作業を進める受講生もいる。


プレゼンテーション

3週目は、プレゼンである。持ち時間を2.5分/人として、現状の課題分析と解決方針、提案内容(駐輪場、オープンスペース、建物の全体配置と各設計内容)を順に説明する。プレゼン後、教員やTAと質疑を行う。

プレゼン本番に入る前に、2人1組になってピアレビューを行う。いわゆる予行演習であり、本番同様に時間を測り、はじめて聞く他人が内容理解できる内容となっているか、互いに確認し合い、最終修正を行う。

プレゼンの様子を眺めていると、プレゼンター以外の受講生のモチベーション維持が大切であることに気づいた。そこで、昨年度より、Googleフォームで学生間投票システムを作り、7段階のリッカート尺度で、自分以外のプレゼンター全員の評価を全員にしてもらった。演習用のPCで投票する者もいれば、自分のスマホで投票する者もいた。尚、この学生間投票結果は教員評価とは直接結びつきはない。 

プレゼンテーション終了後、集計をして(紙のアンケートに比べると集計作業はかなり早い)、掲示板に張り出しておく。

この学生間投票は、発表時間以外のモチベーションアップと、他人のプレゼンから学ぶ姿勢を身に着けてもらうという意味では、概ね好評を得たように思う。継続していきたい。

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PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1706machinami_FukudaFinal.pdf

大阪府建築士事務所協会「まちなみ」2017年6月号