ふくだぶろーぐ

福田知弘の公式ブログです。

都市とITとが出合うところ 第65回 BIMについて

CADとBIMの違い

BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)とは、設計、生産、運用管理のプロセスである [1]。コンピュータ上に作成した建物の3次元情報に、属性情報(仕上げ、コスト、管理情報など)を付加した建物のデータベース(ビルディングインフォメーションモデル)を基に、建築の設計、施工から施設管理まであらゆる工程で、図面化したり、パースを作成したり、仕上げ表を作成したり、解析やシミュレーションしたり、見積・積算したりと展開できる。

f:id:fukuda040416:20190930112353p:plain

BIM(ビルディングインフォメーションモデリング

BIMは、現在広く使われているCADと似ているが、CADは一般に壁などの建築要素を線で表現しており壁というひと纏まりのモデル(オブジェクト)としては定義されていない。また、壁や設備などの属性情報と図面とは連携されていない。一方、BIMは壁やドアなどをオブジェクトとして定義しており、形状だけでなくその属性情報も含まれる。ある部屋とその部屋の中に含まれる建築要素との関係(トポロジ)も定義されている。よって、BIMは、バーチャルビルディング、ビルディングプロダクトモデルとも呼ばれる。

f:id:fukuda040416:20190930112412p:plain

CADとBIMの違い

フロントローディング

建築の設計は、意匠→構造→設備→生産の段階を順に進めていくプロセスとなる(ウォーターフォールモデル)。この方法では、上流段階で行われた設計上の課題を下流段階で発見しても、時間やコストの面で、やり直しができない場合が多い。一方、BIMを使えば設計内容を具体的に入力することができ、作業量のピークを前倒しできる(フロントローディング)。この考え方を実践すれば、建物の構造や形状、仕様などの設計を初期段階でできるだけ決めておくことで設計変更コストを抑えることが可能である。すなわち、施工や完成後をイメージしつつ、シミュレーション、解析、部材の干渉チェックなどを通じて、より多くのことを決めておくことができる。

建物を設計し、生産し、運用管理を行う一連の流れの中で多様な関係者が関わりながら進められる。プロジェクト次第であるが、発注者(施主)、設計者(建築家、コンサルタント、エンジニア)、施工者(ゼネコン、サブコン、メーカー)、行政担当、学識経験者、管理者、投資家、ジャーナリスト、近隣住民(地域)、利用者、一般市民などであろう。そのため、関係者に伝えるメディアとそのためのツールが必要となる。図面、模型、パースは古くから使われており、近年ではコンピュータ技術の発展により、CG静止画、CGアニメーションVR(人工現実)、AR/MR(拡張/複合現実)などが開発されてきた。BIMが存在していない頃は、CGやVRを作成するために2次元CADからCG/VR用の3次元モデルをわざわざ作成していた。一方、BIMの登場により、これらのメディアへ橋渡しすることが容易になる。BIMは建物のライフサイクルを支えるデータとして大変有用である。

建築BIM推進会議

BIM元年と呼ばれて早10年が経とうとしている。今年に入り、官民一体となってBIMの活用を推進し、建築物の生産プロセス及び維持管理における生産性向上を図るために次のような建築BIM推進会議が設置された [2]。

ミッション:建築生産・維持管理に係る各分野におけるBIMの活用・推進に係る検討状況の共有。BIMの活用による建築物の生産・維持管理プロセスや建築物に係る周辺環境の将来像への検討・策定。BIMの活用促進、将来像の実現に係るロードマップの検討・策定。

メンバー:学識経験者5名、設計関係団体6者、審査者・特定行政庁2者、施工関係団体4者、維持管理・発注者関係団体等4者、調査・研究団体5者、情報システム・国際標準関係団体2者

この背景としては、例えば、Society5.0の社会実装を進めるために、建設分野の制度改革として3次元データの活用などを位置づけた「新しい経済政策パッケージ」、デジタルガバメントの推進として建築関係手続のオンラインによる簡素化、次世代インフラ・メンテナンス・システムの構築等、インフラ管理の高度化として建設プロセスへのICTの全面的な活用等の推進を位置づけた「未来投資戦略」などがある。

参考文献

www.wiley.com

国土交通省:建築BIM推進会議, http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/kenchikuBIMsuishinkaigi.html(2019年9月7日閲覧)

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1910machinami_FukudaFinal.pdf
(一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2019年10月号)