読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ふくだぶろーぐ

福田知弘(大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻)のオフィシャルブログです。

都市とITとが出合うところ 第36回 水木しげるロード(1)

水木しげるロード

鳥取県境港市水木しげるロードは、JR境港駅から本町アーケード商店街までの延長約800mの道路と沿道店舗などで構成されている。1992年、商店街の再活性化を目指して、境港市出身の漫画家・水木しげるさんの代表作である「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する妖怪などのブロンズ像を歩道内に設置し、親しみの持てる街路としての整備が開始された(図1-3)。実はオープン早々、ブロンズ像が盗まれ、そのことが全国に報道されたことがきっかけで、水木しげるロードの知名度が高まったそうだ。

f:id:fukuda040416:20160911102718j:plain

図1 妖怪ブロンズ像

f:id:fukuda040416:20160226141318j:plain

図2 沿道店舗はユーモアたっぷり

f:id:fukuda040416:20160225214047j:plain

図3 目玉おやじ街灯

その後も水木しげるロード愛する人々のたゆまぬ努力とともに、2003年には「水木しげる記念館」がオープン、「妖怪のまち」としての人気が定着してきた。さらに、「ゲゲゲの鬼太郎」のアニメ、映画、そしてドラマ「ゲゲゲの女房」の大ヒットにより、2010年には過去最高となる372万人が水木しげるロードを訪れた。境港市の人口は3.4万人であるから、100倍を優に超える人々が来訪したことになる。その後も、年間200万人前後の来訪者で推移し、2016年5月には通算3000万人を突破した(図4)。

水木しげるロードのシンボルであるブロンズ像は、当初23体でスタートしたが、年々その数を増やし、現在は153体までになった。また、沿道の多くの店舗は、妖怪に関連するグッズやお土産を販売しており、妖怪の着ぐるみキャラクターも毎日登場して、「無料のテーマパーク」として賑わいをみせている(図5)。

2013年、境港市の宝である水木しげるロードの賑わいをこれからも続けていくため、市長がリニューアル事業の着手を宣言した。「誰もが訪れたくなるおもてなしとエンターテインメントのロードづくり」を基本理念として、「妖怪の魅力を堪能できる世界で唯一のロード」、「車が主役の道から人を大事にする道」としてリニューアルを実施することが決定した。 f:id:fukuda040416:20120504161308j:plain

図4 賑わう水木しげるロード(写真:境港市

f:id:fukuda040416:20170121125611j:plain

図5 鬼太郎

リニューアルプロジェクト

2014年度より、基本計画および基本設計の策定に入った。基本構想を具現化するために、主に次の内容となった。

  • 歩道:誰もが安心して安全に歩ける歩道とするために、車道を一方通行化して、さらに道路線形を蛇行させることで、変化に富む広い歩道空間を確保する。
  • 滞留スペース:拡がった歩道には、歩行者に楽しみながらくつろいでもらうため、多くの滞留スペースを設ける。この滞留スペースを活用して、ミニイベントなどを計画する。
  • 交差点:バリアフリー化を進めるため、交差点部分の車道の高さを歩道の高さに揃えて、歩道と車道の段差を解消する。
  • ブロンズ像の配置:ブロンズ像は追加しながら設置してきた結果、テーマ性のない配置となっている。さらに、ブロンズ像との記念撮影は訪問者の楽しみのひとつであるが、これに欠けた配置となっている。そこで、「水木マンガの世界」、「森にすむ妖怪たち」、「神仏・吉凶を司る妖怪たち」、「身近なところにひそむ妖怪たち」などのグループに分け直して、拡がった歩道上に再配置する。記念撮影がしやすいように、ブロンズ像の向き、間隔、背景なども考慮する。さらに、ブロンズ像を新たに18体設置することで、リニューアル完成後は171体となる。
  • 街なみの整備:水木作品で描かれた昭和の町並みなどをテーマとして、統一感のある街なみの整備の推進を目指す。
  • 夜間照明演出:水木しげるロード全線に渡り、これまでにない様々な仕掛けを施した夜間照明演出を実施する。

2015年度は、詳細設計と並行しながら、リニューアルプロジェクトの内容を最大限に盛り込んだ社会実験を実施した(図6)。これは、リニューアル後の状況を模擬実験すると共に、実験で得られた結果を詳細設計に反映させて、地元住民の方などとの合意形成を図るためである。主な内容は以下の通りである。

  • 道路空間の再配分調査:車道を2車線から1車線に変更して、歩道を拡げる。拡がった歩道には、歩行者の滞留スペースを確保して賑わいを創出する。自転車通行帯を設けて、歩車分離を図る。
  • 一方通行等調査:区間内は一方通行として、う回路を設定する。車道には、スラローム、ハンプ、狭さくを設けて、車両の速度低減を図る。沿道商業施設には、必要な荷捌きスペースを確保する。
  • 賑わいの創出:拡幅した歩道の滞留スペースの一部に人工芝を敷き、ミニイベントを実施する。その他の滞留スペースにはテーブル、ベンチを設置して、休憩場所として活用する。車道と歩道の仕切りには花のプランターを設置する。

f:id:fukuda040416:20151122115243j:plain

図6 社会実験の様子(写真:境港市

©水木プロ

この翌年となる2016年度、筆者は、この水木しげるロード・リニューアルプロジェクトに参加させて頂くことになった。次号でご紹介したい。

PDF:  http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1703machinami_FukudaFinal.pdf

大阪府建築士事務所協会「まちなみ」2017年3月号