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都市とITとが出合うところ 第46回 VRサマーワークショップ イン ボストン (1)

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World16 10周年
 2017年を振り返れば、建築・都市分野の方々と、BIM(Building Information Modeling)、コンピュテーショナルデザイン、i-Construction、VR(Virtual Reality)などの雑談をする機会が明らかに増えた。政府が発表したSociety5.0の実現には、ソフトウェア技術の大きな貢献が求められるが、ものづくりの現場ではソフトウェア・エンジニアが不足しており、ヘッドハンティングの依頼が増加していると聞く。2018年以降、建築・建設とITをつなぐスキルを有する人材の育成はますます求められてくるだろう。

 2017年は、世界各国の建築・建設・都市系研究者が会して、VRソフトウェアなどの3Dデジタル技術の実用化を考える研究会「World16」が結成されて丸10年を迎えた節目の年となった。2007年秋に8名のメンバーで構成される「World8」がスタートし、その後、メンバーが増えてWorld16となり、現在まで続いている。

 2017年7月、アメリカ・ボストンのマサチューセッツ工科大学(MIT: Massachusetts Institute of Technology)を舞台として、国際VRシンポジウム・第8回サマーワークショップ イン ボストンが開催された(図1)。VRサマーワークショップは、その年の11月に東京で開催される国際VRシンポジウムでの成果発表に向けて、World16メンバーが取り組むハッカソンである。

 サマーワークショップの開催地は、World16メンバーの活動拠点を中心に、これまで、アメリカ・フェニックス(2008年)、箱根(2009)、アメリカ・サンタバーバラ(2010)、イタリア・ピサ(2011)、ハワイ(2014)、ギリシャテッサロニキ(2015)、大阪(2016)で開催されてきた。そして2017年は、ボストンのMITで実施することになった。サマーワークショップ期間中、CPWC(Cloud Programming World Cup: 第5回 学生クラウドプログラミングワールドカップ)の予選選考会や、TV番組の取材などがあり、7か国から約40名が集まった。本稿では、サマーワークショップの舞台となった、ボストンをご紹介しよう。 

ボストン
 ボストンは、ボストン虐殺事件(1770年)、ボストン茶会事件(1773年)、アメリカ独立宣言(1776年)が読み上げられた旧州議事堂など、アメリカ建国に深く関わりのある古都である(図2)。また、アメリカ最初の公園(ボストンコモン 1634年)、最初の大学(ハーバード大学 1636年)、最初の植物園(パブリック・ガーデン 1837年)、最初の公立図書館(ボストン公共図書館 1848年)、最初の地下鉄(グリーンライン 1897年)など、アメリカでの最初の施設が作られてきた。近年では、都市再開発の試みとして、ファニエルホール・マーケットプレイスウォーターフロントでの歴史的建造物の保存・活用)、ビッグ・ディグプロジェクト(高速道路の地下化による都市分断解消と地上部の公共空間創出)などが進められてきた。隣接するケンブリッジと併せ、伝統ある大学が集まる世界有数の学園都市でもある。

 宿泊先のB&Bから、アメリカ初の地下鉄・グリーンラインに乗って、ボストンコモンへ。通常の地下鉄は、都市圏内で旅客の大量輸送を高速で行う、都市高速鉄道として整備されるが、このグリーンラインは、路面電車を直通運転させる目的で都心部が地下鉄化されたものである(図3)。そのため、地下鉄のホームは路面電車と同じく、線路敷とほぼ同じ高さ。そこに2両編成の路面電車が、ゴトゴトとやってくる。乗車した後も、普通の地下鉄よりはるかに遅く、地上の道路に沿った急カーブの地下トンネルをまるでテーマパークのアトラクションのごとく、進んでいった。パークストリート駅で降り、ボストンコモンからフリーダムトレイルを歩いてみる(図4)。

 フリーダムトレイルは、1951年創設と歴史あるトレイルコース。ボストンコモンからチャールズタウンのバンカーヒル記念塔までの全長4kmであり、これを辿ると、旧州会議事堂(図5)、ファニエル・ホール、オールドノース教会(図6)など、アメリカ建国の歴史にまつわる史跡16ヶ所を巡ることができる。道路には赤いレンガのラインが描かれており、地図を眺めなくても迷うことはない。道中、レンガと石造りの素敵な建物が並んでいる中で、まるで大阪ミナミにありそうな牡蠣の看板に出会えた(図7)。フリーダムトレイルの到着地・バンカーヒルから都心への戻りは、ウォーターシャトルを使ってみる。都心と水辺が近くて気持ちがいい(図8)。

 その他に出会ったボストンの素敵な風景。公共図書館の中庭に射し込むCGで描いたような太陽のスポットライト(図9)、高級店の集まるバックベイ地区のバックストリート(図10)、ボストンらしい建物に付けられた鉄骨の非常階段(図11)、コミュニティ・レンタサイクルでの通勤(図12)、そして、地元の農家や魚屋が入りイートイン・スペースもあるボストン・パブリック・マーケット(図13)。

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1801machinami_FukudaFinal.pdf

大阪府建築士事務所協会「まちなみ」2018年1月号)