ふくだぶろーぐ

福田知弘の公式ブログです。

ファテーブル・スィークリー。

大分間が空きましたが、インドの話題に戻ります。

ファテーブル・スィークリー(勝利の都)。アーグラーの南西40kmに位置するムガル帝国第3代皇帝アクバル帝の城跡。世界遺産登録は1986年。

 北インド全域の支配を実現しつつあったアクバルの悩みは、世継ぎがないことだった。ところが、都アーグラーの南西40km、スィークリーに住む聖者シェーク・サリーム・チシュティーは、皇帝がすぐに男子を授かると預言。翌年、預言どおり、後の4代目皇帝ジャハーンギールとなる男子が誕生した。
 アクバルは、聖者にあやかり1571年にスィークリーへの遷都を決行する。
 建設は約5年、3km×1.5kmの広大な土地を城壁で囲み、その中央の丘に宮廷やモスクを赤砂岩で築いた。しかしながら、水不足のためわずか14年後には立ち去らなければならない羽目に。

 水不足な土地柄など、少し調査をすれば判りそうなことであるが、それほど預言に感動し遷都したかったのだろうか。

 建築的には、イスラムヒンドゥーイスラムのアーチやドームの多用を避け、傾斜した屋根や庇などに、木造建築の木組みをそのまま石で表現したような造り)の文化的融合を示していて面白い。

■宮廷地区の五層閣(パンチ・マハル)。下層の柱のデザインは全て異なっている。前の中庭には大きく十字形に方眼が刻まれており、ここでハーレムの女性達を駒に見立てたチェス(所謂人間チェス)を、王が上から眺めながら遊ぶための施設だったそうである。

■彫刻で埋め尽くされた柱、梁、屋根。隙間恐怖症だったのだろうか。

■宮廷地区にある貴賓謁見の間(ディーワーネ・カース)。宮廷地区の政務部分にあたる。

■宮廷地区から見た風景。周りは農村。ここが高台で水に不便なことを実感する。

■モスク地区にあるサリーム・チシュティー廟の内部。光の透過が美しい。