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都市とITとが出合うところ 第56回 香港中文大学 国際研修プログラム 2018(2)

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マイクロバスのチャーター
近江八幡へ日帰り。自然と歴史に溢れ、ボランティア活動が盛んな町。今年のISP2018@大阪・関西(香港中文大学 中國城市住宅研究中心 国際研修プログラム)の参加人数は20名程度となったため、マイクロバスをチャーターすることになった。

筆者自身、マイクロバスの手配を普段やっておらず、こうした作業は時間と手間が意外にかかったりする。手探り状態からはじめることになるが、現在はセマンティック検索エンジンの進歩のお陰で、それなりに相応しいキーワードさえ入力できれば、段階的に調べていくことはある程度可能になってきた。そして今回は、試行錯誤の果てに「貸切バスの達人」という比較サイトを見つけた。

利用期間、出発地、バスのタイプ、バス台数、乗車地、行き先、ガイドの要否を選択すると、登録されたバス会社の中から適当な会社を見つけてくれ、その会社から見積りが届くサービスである。複数の会社から見積りを受領することができ、各種条件を比較しながら、ニーズに合ったバス会社を手配することができた。

林保全整備
近江八幡に到着するや否や、竹林保全整備の研修へ。2005年に発足した八幡山保全整備するボランティアグループ「八幡山の景観を良くする会(通称、八景会)」の兄弟グループとして「(一社)秀次家臣団屋敷跡竹林を守る会(通称、八竹会)」が2016年に発足しており、お世話になった。八幡山の山すそ、近江八幡市立図書館の裏手西側に広がる竹林は、これまで手入れが余り行き届かず荒れた風景になってしまっていたが、八竹会が整備することにより市民の憩いの場所にできたらとの思いで取り組みはじめられた。活動をはじめて1年半が過ぎた頃には、全体面積4000坪余の約30%程度が整備された。

今回の研修では、のこぎりやチェーンソーを使い、大竹の小枝落しや切り落とした竹の集約などを約1時間半かけて実施した。竹林に初めて入る学生がいたり、山に入ってみると思った以上に斜面がきつく移動に苦労したりしたが、貴重な経験となった。

八幡掘
近江八幡市立図書館から旧八幡地区をボランティアガイドとまちあるき。八幡掘、新町通り重要伝統的建造物群保存地区)、日牟礼八幡宮などを巡る。たねや 日牟禮茶屋で和の昼食。

「八幡掘を守る会」は1988年に発足し、今年30周年を迎えた。同会の目的は「地域住民の参加によって甦りつつある八幡堀を再び荒廃させることなく、歴史的遺構の景観保存と水質浄化を図り、かつての清流を蘇らせる活動を推進していくこと」である。全国の河川環境の市民によるまちづくり活動の原点にも位置づけられるものである。

研修時には、ボランティア作業で植えられた1500株の花菖蒲が咲きはじめであった。

信長の館
旧八幡地区から安土へ移動して、安土城天主 信長の館へ。ここには、1992年「スペイン・セビリア万国博覧会」の日本館のメイン展示として安土城天主の最上階5階・6階部分が原寸大にて復元されたものが移築してある。天主内部には、狩野永徳に描かせた「金碧障壁画」も再現してある。

さらに、VR安土城シアターとして、VR技術を応用して、発掘調査や研究資料に基づき、安土山に建てられた安土城と家臣の屋敷、城下町をデジタル再現してある。一般上映されている15分のショートムービー「絢爛 安土城」のあらすじは次の通りである。「天正9年の夏、安土城へ呼ばれたポルトガル人宣教師ルイス・フロイスが総棟梁を務めた岡部又右衛門に城内を案内され、信長の待つ天主へと向かう。豪華絢爛に作られた安土城天主に目を見張るフロイスは、最上階から金色に染まる城下町を眺め、信長の力の強大さに畏怖の念を覚えるのであった。」

デジタルツイン
近年「デジタルツイン(デジタルの双子)」という言葉を聞くようになった。フィジカル空間の情報をIoTなどを活用して、サイバー空間にほぼリアルタイムに送り、サイバー空間内にもフィジカル空間の環境を再現する概念である。サイバー空間上にフィジカル空間の情報を全て再現することから「双子」と呼ばれている。この話を「信長の館」に戻せば、原寸大の安土城天主がフィジカル空間、VR安土城がサイバー空間といえる。現時点で両者は同じ空間に存在しているだけで、情報のやりとりなどのつながりはないのだが、両者をつなげるニーズがあれば何か面白いことができるかもしれない。

 

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1811machinami_FukudaFinal.pdf

大阪府建築士事務所協会「まちなみ」2018年11月号)