ふくだぶろーぐ

福田知弘の公式ブログです。

都市とITとが出合うところ 第64回 テレプレゼンス(2)

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オープンキャンパスでのテレプレゼンス

開発したテレプレゼンスシステムを試してみた。

最初は、中高生を対象としたオープンキャンパスに適用した。このイベント会場は、大阪大学豊中キャンパスであり、筆者の研究室がある吹田キャンパスとは遠く離れた場所での開催となった。そこで研究室に訪問したことのない中高生に、研究室をバーチャル体験してもらいたいと考えた。近年では、360度カメラで撮影した建築空間(研究室)をHMD(ヘッドマウントディスプレイ)で眺めるVRシステムが普及しているが、今回は、リアルタイム性をより高めたバーチャル体験システムを目指した。そこで、2人1組の参加者の片方(参加者A。中高生の友人同士か、中高生とその保護者)が、研究室に瞬間移動した上にその動きをリアルタイムに表現する3次元風景を作り出し、もう片方の参加者(参加者B)はHMDを装着して研究室の参加者Aに出会うシナリオとした。

そこで、参加者Aの3次元リアルタイム点群をKinectにより随時生成し、別途用意した研究室の3次元モデルにリアルタイム合成して、参加者BのHMD(ホロレンズ)に転送するプロトタイプを構築した。BIMモデルとリアルタイム点群との位置とスケールは、PCのゲームエンジン上で調節した。

オープンキャンパス当日、参加者AはKinectの前に座る(図1)。もちろん動いても構わない(実際、頭や手を動かしたり、手を振るなどの動作をしていた)。参加者Aの姿かたちとその動作はリアルタイム点群として、BIMで作った研究室の椅子に座っているかのごとく合成される。参加者BはHMDを装着して、体験ブース内を自由に動き回りながら、参加者Aが研究室にテレプレゼンスしている様子を体験した(図2)。参加者Bは未踏の研究室に顔見知りの参加者Aがテレプレゼンスしていることで、研究室のスケール感や雰囲気を仮想体験できたようである。

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設計検討でのテレプレゼンス

次に、模型等の3次元物体を参加者A(例:設計者)が操作しながら設計検討したり、他者(施主や設計者など)へプレゼンする様子を、離れた場所にいる参加

者BがHMDを着用してリアルタイムに3次元観察したり、聴講したりできるシーンを想定した。

模型(実験では、1/500スケールの都市模型)は机上に置かれているため、参加者Bの近傍にも机を配置して、この机上に模型が置かれているように位置合わせした(図3)。参加者Bは、室内を自由に動き回り、参加者Aと模型の様子を,リアルタイム点群で3次元確認することができる(図4)。

このように、テレプレゼンスシステムを開発し、実際のシーンで使ってみた。その有用性と可能性が確認できると共に、いくつかの課題が明らかになった。

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1909machinami_FukudaFinal.pdf

(一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2019年9月号)

日本建築学会大会(北陸)研究協議会「建築・都市分野のVR・MR技術の展望」(9/4 14)

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日本建築学会大会(北陸) 研究協議会「建築・都市分野のVR・MR技術の展望」がいよいよ近づいて参りました。当日、お会いできますこと、楽しみにしております。大会当日、総合受付付近の資料頒布所にて研究協議会資料を販売しております。販売部数は限られているそうです。お早めに頒布所にいらしてください。いい天気に恵まれますように。

taikai.aij.or.jp

情報システム技術部門 研究協議会「建築・都市分野のVR・MR技術の展望」

日時 2019年9月4日(水)14:00~17:30
会場 金沢工業大学 5号館5・201室
司会 倉田成人(筑波技術大学
副司会 松永直美(レモン画翠)
記録 大石智久(パナソニック
1. 主旨説明 福田知弘(大阪大学
2. 主題解説
1) 建築・都市VR・MRとシミュレーション・AIの融合 福田知弘(前掲)
2) ゼネコンにおけるVRの活用と期待 上田淳(清水建設
3) BIMとVR 濱地和雄(オートデスク)
4) 国内外のVR・MRに関する動向について 安藤幸央(エクサ)
3. 討論 コーディネーター 大西康伸(熊本大学
4. まとめ 笹田岳(鹿島建設

研究協議会資料 目次
1.主題解説・討論
1) 建築・都市VR・MRとシミュレーション・AIの融合
 福田 知弘(大阪大学
2) ゼネコンにおけるVR/MRの活用と期待
 上田 淳(清水建設
3) BIMとVRの現状と今後の展望:BIMを活用したVRの事例
 濱地 和雄(オートデスク)
4) 国内外のVR・MRに関する動向に関して:VR空間における建築物の正しいスケール感に関する考察
 安藤 幸央(エクサ)
5) 情報表現のパラダイムシフト:平面的情報空間から立体的情報空間へ
 大西 康伸(熊本大学
2.寄稿論文
1) デジタルツインに向けて:建築学復権できるか
 渡辺 俊(筑波大学
2) VR・MR研究の動向と建築・都市分野への応用における展望
 清川 清(奈良先端科学技術大学院大学
3) オフライン上の聖地としての「家」:肉体を放棄した民たちの成れの果て
 楢原 太郎(ニュージャージー工科大学)
4) VR技術の建築設計への応用と建築情報教育
 倉田 成人(筑波技術大学
5) xR技術を中心とした分野横断の学習・教育の場づくり
 下川 雄一(金沢工業大学
6) VR等技術を用いた行政課題解決への取組について:近江八幡市におけるVR安土城プロジェクトを事例として
 伴 浩和・才本 佳孝(近江八幡市
7) 観光地における街路空間再配分による公共高質空間の新たな創造:3D-VRを援用した設計計画手法 水木しげるロードリニューアルの事例
 灘 英樹(境港市
8) JR御茶の水駅「バリアフリー整備等工事」について:まちづくりの合意形成におけるVR技術活用の提案
 松永 直美(レモン画翠)
9) 建築・都市分野のVR・MR技術の展望:設計業務におけるVR・MR技術の利活用について
 吉田 哲・四戸 俊介・二本松 千絵(日建設計
10) クライアントと体験を共有する:建築設計事務所におけるVR 利用事例
 戸泉 協・繁戸 和幸・高野 直樹(安井建築設計事務所
11) 公共事業やまちづくりにおける行政の3次元データ継続活用に関する考察
 田上 恭也・大石 智久(パナソニック
12) VR・ARを活用した被災エリアの復興支援:エリアデザインのための合意形成支援技術
 本間 里見(熊本大学
13) 建築・都市分野におけるVRシミュレーションソフトウェアの効果について
 松山 洋人(フォーラムエイト)
14) ゲームを動かす技術とバーチャルリアリティ:誰でもできる研究VR
 𥱋瀨 洋平(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン)
15) xR建築理論(xR建築,xR建築家)を目指したい基礎研究:VR空間における空間知覚と印象の検証
 山田 悟史・北本 英里子・横田 芙実子・村上 雅也(立命館大学
16) 価値探究のための設計空間としてのVRの活用
 酒谷 粋将・四宮 駿介(関東学院大学
17) VE:Virtual Experience
 木村 謙(エーアンドエー)
18) 夢の解像度:仮想現実と金縛りと頬つねり
 小林 佳弘(アリゾナ州立大学)
19) 終末期医療におけるVRを活用したケアの実践と課題
 仁木 一順(大阪大学
20) AR/MRのための要素技術と建築分野への適用試行
 加戸 啓太・平沢 岳人(千葉大学
21) 構造物維持管理業務効率化のためのARシステムの開発
 倉橋 哲弘・佐藤 隆洋(日本工営
22) 集団的合意形成とAR:CityScope の仕組みと応用
 酒井 康史(MIT)

大阪府建築士事務所協会さん主催講習会『BIM(ビム)について ~BIMの基本から最新動向まで~』

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大阪府建築士事務所協会さん主催講習会で、『BIM(ビム)について ~BIMの基本から最新動向まで~』と題して、8月30日18:00より、大阪市内で、お話しさせて頂きます。会員でない方も聴講できるそうです。

詳細・申込:こちら(Word)をご覧ください。お問い合わせは事務局までお願いします。

 

近年の国際会議発表スライドをSlideShareにアップしました (2017-2019)。

SlideShareに、2017年以降の主な国際会議での発表スライドをアップしました。ご笑覧頂ければ幸いです。

SlideShareにアップする場合、Powerpointデータを直にアップするよりも、PDFに変換してからアップする方が色々と確実な気がします。それでも変換の不具合はいくつか確認できました。

私の場合、プレゼンテーションはPowerpointなどのスライドだけでなく、実機デモやビデオを頻繁に用いています。そこはSlideShareではお伝えできず残念です。いつかどこかで。

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CAADRIA 2019国際会議(ビクトリア大学ウェリントン, ニュージーランド)で発表した2つのスライドです。

Visual Environment by Semantic Segmentation Using Deep Learning: A Prototype for Sky View Factor
Rui Cao, Tomohiro Fukuda, Nobuyoshi Yabuki, Osaka University, Japan
Presented at CAADRIA 2019, Victoria University of Wellington, New Zealand
Keywords: deep learning (深層学習), landscape simulation (景観シミュレーション), semantic segmentation (セマンティックセグメンテーション), sky view factor (天空率), visual environment (視環境)

www.slideshare.net

Integrating UAV Development Technology with Augmented Reality Toward Landscape Tele-simulation
Liang Yan, Tomohiro Fukuda, Nobuyoshi Yabuki
Osaka University, Japan
Presented at CAADRIA 2019, Victoria University of Wellington, New Zealand
Keywords: landscape simulation (景観シミュレーション), markerless augmented reality (マーカレスAR), tele-simulation (遠隔シミュレーション), telecommunication (遠隔通信), unmanned aerial vehicle (無人機)

www.slideshare.net

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eCAADe 2018国際会議(ウッチ工科大学, ポーランド)で発表したスライドです。

Point Cloud Stream on Spatial Mixed Reality: Toward Telepresence in Architectural Field
Tomohiro Fukuda, Yuehan Zhu, Nobuyoshi Yabuki
Osaka University, Japan
Presented at eCAADe 2018, Lodz University of Technology, Lodz, Poland
Keywords: mixed reality (複合現実), point cloud stream (リアルタイム点群), real time (リアルタイム), remote meeting (遠隔会議), telepresence (テレプレゼンス)

www.slideshare.net

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CAADRIA 2018国際会議(清華大学, 中国)で発表したスライドです。

Tracking Robustness and Green View Index Estimation of Augmented and Diminished Reality for Environmental Design: PhotoAR+DR2017 Project
Kazuya Inoue, Tomohiro Fukuda, Rui Cao, Nobuyoshi Yabuki
Osaka University, Japan
Presented at CAADRIA 2018, Tsinghua University, Beijing, China
Keywords: augmented reality (拡張現実), diminished reality (隠消現実), environmental design (環境デザイン), green view index (緑視率), segmentation (セグメンテーション)

www.slideshare.net

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CAAD Futures 2017国際会議(イスタンブール工科大学, トルコ)で発表したスライドです。

Integration of a Structure from Motion into Virtual and Augmented Reality for Architectural and Urban Simulation
Tomohiro Fukuda 1), Hideki Nada 2), Haruo Adachi 2), Shunta Shimizu 3), Chikako Takei 3), Yusuke Sato 1), Nobuyoshi Yabuki 1), and Ali Motamedi 1)
1) Osaka University, Japan, 2) Sakaiminato City Office, 3) Forum8 Co., Ltd.
Presented at CAAD Futures 2017, Istanbul Technical University, Istanbul, Turkey
Keywords: Architectural and urban design (建築・都市デザイン), visual simulation (視覚シミュレーション), virtual reality (人工現実), augmented reality (拡張現実), structure from motion (多視点画像からの3次元形状復元)

www.slideshare.net

都市と建築のブログ Vol.46 神山:案山子 up!

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KAMIYAMA BEER

都市と建築のブログ 第46回目(2019年7月号)は徳島県神山町をご紹介します。

NAVERまとめにも都市と建築のブログの過去記事をアーカイブしています。

matome.naver.jp

■都市と建築のブログ バックナンバー

都市とITとが出合うところ 第63回 テレプレゼンス(1)

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テレプレゼンスシステムの構成

遠隔会議の課題とテレプレゼンス

人と人とのコミュニケーション(会議)の方法について考えてみよう。

近年では、電子メールなどにより異なる場所・異なる時間の状態で行うコミュニケーションに加えて、テレビ会議やチャットなどにより異なる場所・同じ時間の状態での遠隔会議が使われるようになった(電話会議の発展形)。

一方、会議の主なメンバーが離れた場所にいる場合、時間やコストをかけてでも、直接出会う会議は、実施されている。テレビ会議での遠隔会議は、現状では、画面を通して会議をしているという感覚が残り、システムに気をつかうことも多く、直接会う会議ほど自然な感じでメンバーと接していない。

この課題を解決できそうな概念・技術として、テレプレゼンスが挙げられる1)。これは、遠隔地のメンバーとその場で対面しているかのような臨場感を提供する。

建築・都市検討時のニーズ

建築や都市を遠隔会議で検討する場合、会議メンバーの姿や音声を共有するだけでなく、建築物や都市空間や家具といった検討対象の3次元デジタルモデルを共有する必要がある。そのために、3次元デジタルモデルをメンバー同士で共有できるシステムの開発と実証が進められてきた。既に、インターネットを通じて、3次元デジタルモデルをVR(人工現実)空間でリアルタイムに共有したり、そのVR空間にスケッチを描ける機能は実用化されている。

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3次元建築・都市モデルを共有しながらのVR遠隔会議

この方法によりメンバー同士で共有する3次元デジタルモデルは、3次元CADやBIMで作成されたものであるが、全ての3次元デジタルモデルをコンピュータ上に定義しているため、メンバーが活動している現実世界とは切り離された仮想世界で構成されている。つまり、テレプレゼンスのように現実世界と何らかのつながりを持ちたい場合にはこの方法は適していない。

MRとリアルタイム点群

MR(複合現実)は、現実世界に目に見えないデジタル情報を違和感なく重ね合わせるAR(拡張現実)と、デジタル世界の中に現実世界を取り込むことにより臨場感を高めるAV(拡張仮想)を合わせた概念であり、現実世界とのつながりを保持できる。

3次元デジタルモデルを作成する方法として、現実世界の空間や物体から作る点群を利用することを考える。点群は、数多くの点の集合であり、3次元座標と各座標のRGB値(光の三原色:赤・緑・青)などが定義されている。点群からの3次元デジタルモデルを用いて、現実世界にある空間や物体を精巧に保存したり、そのモデルを3次元CADやBIMに取り込んで新たなリノベーション設計に利用できる。しかし、点群を作る際に、レーザー測量や写真の撮影、及び、それら取得したデータから3次元点群を生成するための処理に一定の時間を要してしまう。

一方、RGBカメラとデプスセンサ(RGB-Dカメラ。デプスセンサは、センサ位置からの距離(3次元情報)を取得できる)を用いた手法は、現実世界にある空間や物体を取得できる範囲は限られるものの、3次元点群をリアルタイムに取り込むことができる(この方法で生成した点群を、リアルタイム点群と呼ぶ)。

開発したテレプレゼンスシステム

そこで、テレプレゼンスの実現にむけて、リアルタイム点群を表示するMRシステムを実装してみた2)。市販されているハードウェア・ソフトウェアによりリアルタイム点群を表示可能なMRシステムを目指した。

方針として、マイクロソフト社のKinect for Windows v2(Kinect)によりリアルタイム点群を取得し、光学シースルーによりMRを体験できるマイクロソフト社のHoloLensに転送する手法とした。

装置

システムを構成する装置は以下の通りである。

  • Kinect:内臓のRGB-Dカメラを用いてリアルタイム点群を生成する。
  • PC(Windows10):Kinectで生成されたリアルタイム点群を取得し、処理を加える。ゲームエンジン上でKinect for Windows SDK 2.0を使用して開発した。
  • ルータ:PCとHoloLensとのWiFi通信に必要。
  • HoloLens:離れたB地点にいるユーザが装着することで、テレプレゼンス映像を眺めることができる。 

処理の流れ

Kinectを用いて、現実世界の空間や物体をスキャニングし、リアルタイム点群を1秒間に30フレーム生成する。生成された点群は、接続されたPCに随時転送される。
転送されるリアルタイム点群には、不要な点群(ノイズ)が多く含まれている。そこで、不要なノイズを削除する処理を加えた。そのため、HoloLensでは、ノイズを減らして表示でき、よりスムーズにレンダリング(描画)することができる。PCに転送された点群は、WiFi経由でHoloLensに随時転送される。

 

参考文献

  1. Buxton, W.: Telepresence: integrating shared task and person spaces. Proceedings of Graphics Interface'92, 123-129, 1992.
  2. Fukuda, T., Zhu, Y., Yabuki, N.: Point Cloud Stream on Spatial Mixed Reality: Toward Telepresence in Architectural Field, Proceedings of the 36th eCAADe Conference, Vol.2, 737-744, 2018.

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1907machinami_FukudaFinal.pdf

(一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2019年7月号)

ハルビン工業大学(深圳)と大阪大学との国際デザインワークショップ(6/24-7/3)

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ハルビン工業大学(深圳)(HITSZ: Harbin Institute of Technology, Shenzhen)と大阪大学(OU: Osaka University)とで、国際デザインワークショップを開催することになりました。

日時:6月24日~7月3日

会場:大阪大学 吹田キャンパス テクノアライアンス棟1階交流サロン

ウェブサイト:

hitsz-ou-workshop.jimdosite.com

 

HITSZからは17名、OUから13名、総勢30名が参加します。埼玉県熊谷市を対象地として、中国・日本の合同チームからなる5つの国際学生チームが、地方都市の再生について考えていきます。

関連するテクニカルツアーとして、6/28はサスティナブル建築「NEXT21」、VR企業「㈱フォーラムエイト」、まち医者「(有)ハートビートプラン」アーバンコンサルタントを訪問します。

参加される学生の皆さまにおかれましては、都市計画・建築・デザイン・BIM・VRに関するスキルの習得のみならず、英語でのコミュニケーションを通じて国際性の涵養につながれば幸いです。

都市とITとが出合うところ 第62回 メディアファサード

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メディアファサード(香港・環球貿易廣場)

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メディアファサード香港島

メディアファサード

デジタルサイネージに続いて、メディアファサードについて考えてみよう。メディアは情報を伝達する媒体を、ファサードは建築物の正面(立面)部分を、それぞれ意味する。すなわちメディアファサードは、建物の立面(壁やガラス)にLEDなどの光源を設置して、デジタル技術により映像を動的に表示する照明演出といえる。

ビル単体のメディアファサード

建物の照明演出は、直接投光照明方式(対象となるファサードの外側から投光。ライトアップなど)、自発光照明方式(建物自身に点状・線状の発光体を設置。イルミネーションなど)、透過光照明方式(屋内照明を外観上も美しく見せる)などの方式により取り組まれてきたが 1)、光源(照明器具)は長らく単色であり、さらに、光源同士がネットワーク化された事例は少なかった。

LEDはフルカラーの表示が可能であり、光の強さや色を変化させることで動きを表現することができる。各LED光源はネットワーク化もできる。4月に香港を訪問した時のこと、香港で最も高い環球貿易廣場(484m)はファサード全体を使って、デジタル時計、月の満ち欠け、鳥の飛ぶ様子、雲の動きを白色の落ち着いた色合いで大らかに表現されていた。夜7時を迎えると、アナログ時計やハートの表示となり、時報を意識させた。余談であるが、ビル足元の香港西九龍駅からは、北京までの直通列車が昨年開通、2000kmを9時間で結ぶ。

香港島のビクトリアハーバー側はもう少し派手な演出。中国銀行タワー(367m)は象徴的な三角形を構成する各辺が白色でテンポよく移動する。また、香港上海銀行・香港本店ビルはファサード中央部のまとまったエリアがデジタルサイネージなどで表示されていた。

都市スケールのメディアファサード

ビル単体だけでなく、都市スケールでのメディアファサードも出現している。筆者が最近驚いたのは、中国・深センの取り組みである。中心部に位置する公共施設地区広場とそれを囲むビル群が、一体的にメディアファサード化されている。規模を地図で測ってみると、およそ1km×2kmという巨大さ。季節ごとにコンテンツを変えながら、毎日実施されているそうである。是非、Youtubeで実写映像をご覧頂きたい(下)。これは、メディアアーキテクチャ学会(Media Architecture Institute)で活動する知人に教えていただいた。

www.youtube.com

メディアアーキテクチャ学会

メディアアーキテクチャ学会(Media Architecture Institute)は、メディアファサードを研究対象のひとつとしている。2009年にヨーロッパで設立され、全世界に広がっている。当学会ではメディアファサードの他、モバイルアプリ、ソーシャルメディア、位置情報サービス(Location based services)、都市のスクリーン(Urban Screens)、応答環境(Responsive Environments)など、建築・都市の空間や活動に関するデジタル技術を扱っており、研究発表会のみならず、ビエンナーレが2年に一度開催されている。また、メディアアーキテクチャビエンナーレの賞に応募された作品を集めた書籍も出版されている 3)

メディアファサードがまちなみの景観に与える影響は小さくない。広告物は情報伝達媒体のひとつであり、立面全体に広告物がLED表示されたものは、メディアファサードともデジタルサイネージともいえそうである。これらをどう考えていくのか、質の髙いメディアファサードを如何に作っていくか、隣接するメディアファサード同士は折り合えるのか、気になるところである。

参考文献

1) 景観材料推進協議会: 景観照明 ー景観に配慮した照明の使い方ー,1997.

2) Media Facade Limited: Shenzhen media facade project https://www.youtube.com/watch?v=b1n-aFwkGqc(2019年5月8日参照)

3) Luke Hespanhol et al., Media Architecture Compendium: Digital Placemaking, Av Edition Gmbh, 2017.

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1906machinami_FukudaFinal.pdf

(一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2019年6月号)

「水木しげるロード」が照明学会「2019年 照明デザイン賞 最優秀賞」を受賞

水木しげるロード鳥取県境港市)」が、(一社)照明学会の2019年照明デザイン賞最優秀賞を受賞しました。

●受賞者
 長町 志穂(株式会社 LEM空間工房)
 熊取谷 悠里(株式会社 LEM空間工房)

●作品関係者
 事業主:中村 勝治(境港市長)
 灘 英樹(境港市 建設部 次長 兼 水木しげるロードリニューアル推進課 課長)

●設計関係者
 土木設計:栗原 裕(有限会社 ユー・プラネット)
 システム設計:伊藤 貴史(ウシオライティング 株式会社)
 VR監修:福田 知弘(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

 水木しげるロードのリニューアルプロジェクトは、公共道路空間の新たな魅力化と昼夜にわたる集客を期待するまちづくりとして、歩道拡幅整備と照明デザイン等により2018年夏に完成したものです。道路環境の改善とともに「日没後まで居たくなるまち」をめざして、照明効果により「妖怪の気配を感じられる光のナイトミュージアム」としてリニューアルすることを照明デザインとして提案し実現しました。

 約800mの歩道は、177体のブロンズ彫刻が再配置され「妖怪影絵」「音と光の演出」をはじめとする、異なる照明手法と効果を公共照明としてとりいれた「光をめぐるまち」となっています。すべての照明は、全域でトータルに細かくプログラム制御し、水木しげるロードに相応しいエンターテイメント性と深夜の省エネルギー、安全安心を同時に実現しています。

 境港市大阪大学は、設計段階において、水木しげるロードの全体像の検討と合意形成に向けてVR(人工現実)技術を応用した共同研究を (有) ユー・プラネットや (株) LEM空間工房の設計関係者と連携しながら実施しました。

 審査講評では「通常このような計画は、短期イベントでも道路照明や景観照明の規制や基準、あるいは様々な意見に阻まれることが多い。しかし、これら多くの課題を照明デザイナーと熱意ある行政担当者や住民が一致協力して解決し、常設の施設として成立させた本件は、照明デザインの歴史に足跡を残す意義のあるプロジェクトといえるだろう。」と評価されています。

 実現に向けては様々な大きな壁を乗り越える必要がありましたが、チームが知恵と技術と汗を結集して壁をひとつひとつ乗り越えていきました。5月の10連休で、43.6万人が訪問したそうです。皆さまも是非、ご訪問ください。

 

www.ieij.or.jp

www.eng.osaka-u.ac.jp

www.see.eng.osaka-u.ac.jp

建築ジャーナル5月号特集「建築+情報技術=?」に都市景観CGと温熱環境MR(複合現実)が紹介されました

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建築ジャーナル5月号の特集「建築+情報技術=?」で、筑波大学 渡辺俊 教授がご寄稿された「建築情報学がなぜ必要なのか ―これまでとこれから」の中で、1980代に制作された大阪大学笹田研究室(現 環境設計情報学領域)の都市景観CGアニメーション、また、研究室で近年開発している温熱環境MR(複合現実)のスクリーンショットが「実用段階に入りつつあるVR/MR」の事例として掲載されています。

ご笑覧頂ければ幸いです。

www.kj-web.or.jp

www.see.eng.osaka-u.ac.jp