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福田知弘(大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻)のオフィシャルブログです。

都市とITとが出合うところ 第44回 香港中文大学 国際研修プログラム2017 (2)

ISP2017 @大阪・関西 その2
 今年5月に企画した、香港中文大学 中國城市住宅研究中心とのInternational Study Programmes(ISP: 国際研修プログラム)。本稿では、環境配慮型建築を見学した様子をご紹介しよう。

NEXT21
 NEXT21は、1993年に竣工した、大阪ガス㈱による近未来の都市型集合住宅のあり方を模索する実験プロジェクト。スケルトン(躯体)とインフィル(内装)とが明確に分離された構法で作られた。近未来の都市居住ライフスタイル、環境・エネルギー面の取り組みなどを研究テーマとして実験が進められ、約5年をひとつのフェーズとして、現在は第4フェーズ(2013-)である。第4フェーズは、2020年頃までの集合住宅における「環境にやさしい心豊かな暮らし」を追求しており、「人と人のつながりの創出」「人と自然の関係性の再構築」「省エネ・スマートな暮らしの実現」の具現化に取り組んでいる(図1)。
 例えば、燃料電池をはじめとするガスコージェネレーションシステムを集合住宅で高効率に活用することを目指して、エネルギーシステムの実証実験が行われている。具体的には、家庭用固体酸化物形燃料電池コージェネレーションシステム(SOFC)を用いた電力や熱の住戸間での融通、電力需給ひっ迫を緩和するデマンドレスポンス対応と逆潮運転、停電時自立システムの構築、HEMSの導入、再生可能エネルギーとの組み合わせなどである。また、現代家族の持つ課題への対応や都市緑化の促進のために、中間領域の実験、2020年の住まいの提案、省エネライフスタイルの醸成、緑地マネジメント実験などの住まい・住まい方の実験も実施している。
 NEXT21の住戸は大阪ガスの社員とその家族が実際に居住されているため、住戸の内部見学は中々難しい。が、偶然にも、居住されていない住戸を見学することができた。この住戸は当初設計では、玄関を設けず、共用廊下(外部)から住戸内部へは各個室にまずアクセスし、個室から共用のリビングルーム・ダイニングルームにアクセスする動線設計が特徴的であった。
 NEXT21は谷町六丁目にあり、北には大阪城公園、南には天王寺公園が広がる。建設前の調査で、大阪城公園から野鳥が敷地周辺に多数飛来していることがわかり、その野鳥を呼び込むための植栽計画が立案されている。時間が経ち、鳥が運んできたと思われる種子が成長した樹木たちが印象的であった。

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テクノロジー・イノベーションセンター
 ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)は、延べ床面積3万平米を超えるビルとしてはLEED-NCプラチナ認証を取得した唯一の大型ビル(2017年5月時点)。同社のコア技術である、ヒートポンプ、インバーター、フッ素化学などの技術開発拠点である。ZEB(Zero Emission Building)を目指して消費エネルギーを70%削減しつつ、700人の研究・技術者が一堂に就業する「協創イノベーション」プレイスを実現しようとしている。例えば、「世界一よく眠れる寝室はどんな空気環境なのか」「病院にはどういう空気空間が求められるのか」など、空気のあり方を考えようとしている(図2)。
 ダイキン淀川製作所の敷地に入るとすぐにTICの森に出会う。北摂の植生を参考とした自然樹形の森は、近隣住民にも開放されている。建物外観は、庇の外側に設けられた白いスチールパイプが2段庇を構成しており、ハイテクの研究開発拠点らしい。
広々としたエントランスホールは、TICの森から取り入れた空気を吹き出すガラスチャンバー「エアウォール」がお出迎え。同じフロアには「啓発館」があり、ダイキン工業の歴史や取り組みを学ぶことができる。かつて、フロンガスを使用した潜水艦の冷房装置を製造されていたことを初めて知った。オフィス棟3階にある知の森は、ミーティングスペースに加えて、フッ素技術を使ったユニークなアートが展示されていた。オフィス棟最上階(6階)にあるフューチャーラボは、社内外からの講師を招いての勉強会やワークショップが開催されるオープンな空間。バルコニーに出れば、淀川と大阪都心を眺めることができた。
 オフィススペースは、消費エネルギーを細かく計算するため、温湿度・CO2濃度センサを4.5×9m毎に配置しており、計量結果はオフィス内のデジタルサイネージに3次元でリアルタイム表示される。また、入場はできなかったが、4階と5階のオフィス空間を繋ぐ中間階には、ワイガヤステージが設けられている。文字通り、社内の異分野を結びつけてコミュニケーションを強化するために、社員同士がワイワイガヤガヤと議論を行う場である。MITアレン博士の理論を参考に、全オフィスエリアから30m以内で移動することができる位置に設けられている。

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PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1711machinami_FukudaFinal.pdf

大阪府建築士事務所協会「まちなみ」2017年11月号)