早くも明日から3月ですね。
大阪府建築士事務所協会誌「まちなみ」で連載中の「都市とITとが出合うところ」第89回は、「近場にアート発見!」をご紹介します。
見えない風を見せてくれる
新宮晋さんのアートは、風や水の力で動く立体作品であり、自然を見える化してくれる。
筆者の職場がある大阪大学 吹田キャンパスの西側には、千里北公園という、吹田市で2番目に大きい公園が東西に広がっている。その広さは、30.1haもあり、ドーンと雄大だ。
千里北公園の小高い丘の上に、新宮さんの「風の道」というモニュメントがある(図1左・中)。完成は大阪万博の年、1970年。学生の頃から、空き時間を見つけては、風の道の間近に行って、ぼーと眺めたりしていた。高さは20mもあり、風を受けて、風車は回り、大小のモビールはゆらゆらと動く。
職場から見えた!
筆者のオフィスは、千里北公園の東端にほど近い、M3棟というビルにある。M3棟の中廊下は、西北西に向かって40mほど長く伸びている。ある日の朝、5階の廊下を歩いていると、なんと真正面に「風の道」があることに気づいた(図1右)。
M3棟に居住して6年が過ぎたが、筆者の居室がある4階のフロアからは木に遮られて見えず、ひとつ上の5階フロアに上がってもこれまで気づくことはなかった。
5階を歩いたこの日、早朝の廊下は暗いので屋外がクッキリと見える「フレーム効果」となったのであろうか、風が非常に強かったため「風の道」の黄色い風車がよく回っていたのであろうか。窓に貼り付いている消防隊進入口のシールもアートに見えてきた 笑。
どのくらい離れているのだろうと、地図で測ってみる。確かに、M3棟の軸線上にあり、M3棟からは800m離れていることがわかった(図2)。
アートは近場にもある
コロナ禍はまだ続いており、移動や出会いに制限がかかり、不自由を感じる。アート鑑賞は、遠くに出かけるもの、今しばらくの辛抱かと思い込んでしまっていたが、近場でも楽しめることにも気づかされた。
近場で新宮さんの作品を当たれば、「風の道」のほか、千里中央公園には「森のささやき(1990年)」(図3)、吹田市文化会館(メイシアター)には「空のイメージ(1985年)」(図4)がある。