もっとリアルな雰囲気へ
ZoomのようなWeb会議システムは、参加者がオンライン会場に集まり、ひとつの話題について話しあうことはできるものの、複数の話題を同時並行で話すことは難しい。ブレイクアウトセッションという個室に入れば、それぞれの話題を話しあえるが、ほかの個室の様子がわからない。
現実世界でのワークショップや懇親会などのイベントは、多くの人々の会話が同時並行に進み、話すメンバーが時間とともに入れ替わり、隣の会話が少しは聞こえ、会場を自由に移動し、参加者全員にスピーチしたりと、出会いと会話のパターンが様々である。このような環境はオンラインでできないだろうか。
リアルに近いWeb会議システム
このようなニーズから、以下のようなリアルに近いWeb会議システムが増えている。
参加者は、空間を自由に移動できる。今回紹介する空間とは、3次元の立体のように見えるが実は2次元平面なので、操作は簡単である。例えば、左ボタンのドラッグで参加者自身を移動させ、中ホイールで画面全体をズームイン・アウトする。
参加者の声はユーザー同士の距離に応じて強弱するため、近くのユーザーとは会話できるが、遠くのユーザーとはできない。実際の感覚に近い。
ZoomなどのWeb会議システムとの共通機能として、画面共有、画像やビデオファイルの共有、空間全体へのアナウンス(メガホン機能)、チャットがある。
オンラインワークショップ
建設ICTマスター養成講座(厚労省「令和元年~2年度 教育訓練プログラム開発事業」)の一環で、VRワークショップをSpatialChatというWeb会議システムで実施した(主催:(株) フォーラムエイト)。
参加者は、津波避難、杵築(大分)、倉敷(岡山)、南砺(富山)、佐原・潮来(千葉・茨城)のVRモデルを事前に選ぶ。VRモデルごとに計6グループを作った。
Spatial.Chatの背景画像には、6グループのエリアと全員集合用のエリアが描かれてある。参加者は、グループごとにわかれて、各自のPCにインストールしたVRソフト・UC-win/Roadを使いながら、VRモデルを編集しつつ、VRプレゼンテーションを作成した。筆者やVRエンジニアも参加しており、参加者はVRソフトを画面共有して、わからない点などのサポートを受けた。
最終プレゼンは、全員が聴講できるよう、メガホン機能を使って空間全体にアナウンスしながら行った。
Spatial.Chatを使うことで、チーム内での協議だけでなく、チーム外の参加者とも、いつでも、どこでも、コミュニケーションできたようである。有意義なオンラインVRワークショップとなった。
RPG風のWeb会議システム
Gather.TownというWeb会議システムは、レトロなロールプレイングゲーム(RPG)の画面である。
まず、先述した機能は概ねカバーしている。さらに、椅子と椅子の間などにプライベートエリアがあり、その中の会話はエリア外からは近づいても聞こえない。また、ホワイトボードなどのツールが用意されている。参加者自身は踊ったり、自分自身を半透明化して障害物をすり抜けたりとゲームのキャラクターのようにふるまえる。このような機能は、会話を活発化させ、発想を膨らませることができるだろう。
ルームは、オフィスやパーティスペースなどがデフォルトで用意されている。また、背景画像を用意し、家具や観葉植物などのアイテムをマス目に沿って配置することで、懐かしい空間や憧れの空間など、自分だけのオリジナルルームを作成することもできる。
2Dマップとユーザーの動きがリンクしていることや、プライベートエリアやアイテムを配置することで、従来のWeb会議システムよりもリアルに近い空間で、ワークショップや懇親会などのイベントに参加することができる。