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都市とITとが出合うところ 第61回 デジタルサイネージ (2)

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令和の時代がはじまりました。引き続き、どうぞよろしくお願いします。「都市とITとが出合うところ」第61回は前回に引き続き「デジタルサイネージ (2)」です。

 

デジタルサイネージの屋外設置

屋外に設置する電子看板デジタルサイネージ)は、建築物や都市空間の賑わい形成や魅力向上、新たな表現手段として期待されている。その一方で、光源として使われるLEDの高輝度化、ディスプレイの大型化や高解像度化、さらに、設置される数が増えてくると、人間や都市景観への影響が懸念されてくる。

先月号「デジタルサイネージ (1)」で紹介した実験内容は、ディスプレイの背景がほぼ真っ暗の状態でディスプレイの輝度(無彩色)を変化させた時のまぶしさ、不快さを定量化したものである。そのため、あらゆるコンテンツや都市環境下においてそのまま適用できるわけではないものの、得られた結果はあやふやな経験則よりも役に立つであろう。一方、実際にデジタルサイネージの設置基準を数字のみで決めてしまうと、数字だけがひとり歩きしてしまい、単に数字のみ守ればよい、となりがちである。もともとの精神は何なのか、何が大切なことなのか、定量化が難しいコンテンツの評価を含めて、総合的に考える必要がある。

大阪市デジタルサイネージ等取扱要綱

大阪市では、大阪市景観計画に定める重点届出区域におけるデジタルサイネージ等取扱要綱を制定している1)。これは、デジタルサイネージ設置協議対象地区(大阪駅周辺、難波駅周辺の重点届出区域)でデジタルサイネージを設置する際に、事前審査する制度であり、LEDの輝度値だけでなく、コンテンツの質を含めて、総合的に評価しようというものである。筆者は、委員会のメンバーとして関わった。主なポイントを記す。

  • 設置地区:デジタルサイネージ設置協議対象地区かどうか。
  • 設置の前提条件:にぎわいの形成やまちの魅力向上につながるデザイン性の高いものであること。中層部に設置する場合には、地域独自の基準や協議体制を設けていること。
  • 設置期間:a)常時設置するのか、一定の期間設置するのか(要綱では以上を「デジタルサイネージ」と定義)、あるいは、b)イベント等の実施期間のみ一時的に設置するのか(要綱ではこれを「一時広告物」と定義)。
  • 設置位置:建築物の低層部なのか、中層部なのか。
  • 大きさ:設置位置と視点場との関係や周辺への影響を考慮して最大面積を設けている。多くの歩行者が地上面を歩く場合、低層部のディスプレイは間近で眺める可能性が高くまぶしさや不快さの影響が出やすい。中層部のサイネージは眺望できる範囲が広くなる。
  • 周辺への影響:a)色彩はまちなみを阻害していないか。補色や彩度差の大きい色の組み合わせを使用せず、類似色や中間色など、落ち着いた色を推奨している。b)コンテンツは、まぶしすぎない明るさ(輝度)か。特に夜間。c)不快感を与えないような、ゆるやかな表示速度や繰り返し回数か(画像と画像を切り替える際のトランジッションを含む)。d)不快感を与えないような音量や音色か。
  • コンテンツ:a)デザイン性の高いものであるか。例えば、ニュースや災害時の避難情報等を除いて、原則、文字のみの広告物は認めていない。b)広告媒体のみならず、都市の利便性や安全性を高める情報やまちの魅力を向上させるエリアマネジメントの情報等を提供しているか(割合として1/4以上)。c)公序良俗に反していないか。d)見る人に不快感や不安感を与えないものであるか、など。

デジタルサイネージのコンテンツは常に変わっていく。そのため、設置後の運用状況を年度末に確認し、必要に応じて事業者にアドバイスしながらデザイン調整、デザイン誘導を行っている。

参考文献

大阪市:重点届出区域におけるデジタルサイネージ等取扱要綱(2019年4月1日参照)

www.city.osaka.lg.jp

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1905machinami_FukudaFinal.pdf

(一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2019年5月号)