プレゼンテーションに,色々と関与する機会の多い季節が今年もやってきました.メモ書き風で恐縮ですが,いつも阪大の講義・演習でお話している内容です.お若い方向け.
就職面接・論文発表・コンペプレゼンなどでは,類似の質を有するコンペティターが多数.
そのためプレゼンテーションで差別化が必要.下記全ての項目の質を高めて.
- プレゼンの内容(哲学・問題意識・科学的事実等に基づき自身が考え実施or提案したもの)
- 聴衆の知識レベル・興味やそれらのバラツキ.
- スライドのデザイン.
- 声の大きさ,速度,抑揚.
- 服装,登壇してから降壇するまでの一連の仕種,態度.
- 場の雰囲気作り(貴方が主役の時間.見方を変えれば聴衆の時間を頂戴している).
- 聴取(審査員)は同じようなプレゼンの連続にくたびれている.印象が残せるか.
- 間を重んじて.
■スライドのデザイン
- スライドはあくまで口頭発表を補うもの.一方,スライドの内容をみると思考の質がよくわかる.
- pptやkeynoteだけでなく,preziなど,プレゼンの性質に合ったアプリを選択.
- テキスト,表,グラフ,画像,動画などをフル活用.
- スライド同士,一枚のスライド内の論理的関係性を確認する.示すべき情報の序列も.
- 文字のデザイン
- 同じ意味の語句は一貫して同じ語句を使う.
- 同じ意味の語句はできるだけ短い語句の方が理解し易い.漢語,体言止め.(重ね合わせる→重畳)
- 長い語句は短い語句で定義を.
- 図のデザイン
- 図は文字以上に多様な意味を含む.聴衆の理解がバラケないよう伝えたい意味をフォーカスさせて.
- 同じ意図で用いる図は一貫して同じ図を使う.
- グラフは短時間で理解が難しい.色や記号,アニメーションなどで理解のし易さに工夫を.
- 正投影、透視投影の見せ方に応じた使い分け。地図にはスケールと方位を挿入。
- レイアウトのデザイン
- 上記,policyを決めたら一貫して使うこと.気分で変えたりすると聴衆は理解不能.不信感が高まる.
事前準備
- 2日前にはスライドを一旦完成させしばらく意識の外に追いやる.2日経った後,他人の資料のように批評的にチェックすると,校正がうまくいくこと多し.
- 事前の機器接続,部屋に対する文字の大きさ,色味,音声チェックは自分自身で.機器によりレイアウト・アスペクト比など変わること有.
- 司会者・進行役には事前に挨拶を.緊張もほぐれる.
わざわざ,「プレゼンの内容」と大きく書きましたが,それには訳があります.上のように留意すべき項目を羅列すると「プレゼンの内容」への留意が相対的にかんなり小さくなってしまい,スライドのデザインの方がより重要だと捉え間違いをしてしまいがちです.そして,本質のない単なるテクニック論に陥ることになります.また,最初に「類似の質」と書きましたが,当然プレゼンターにより差はあります.その差を大して検討せず,テクニック論に走ってしまうのが最悪.差の有り様は微分したり分解したりして確認してみましょう.
とにかく差別化のためにはまず,内容にこだわってください.
コミュニケーションの重要性が叫ばれて久しいが,送り手からの質の高いプレゼンテーションがはじまらなければ,質の高いコミュニケーションもはじまらない.上記,文章を読むだけでは実践しにくいかもしれませんが,ご参考まで.
■プレゼンテーション・メモ。(ふくだぶろーぐ,2010年2月9日)