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都市建築VR制作マニュアル3:写真加工によるテクスチャマッピングデータ作成。

テクスチャデータとして使用する場合,撮影した画像には概ね下記のような課題が含まれている。

1. 遠近歪みのため,上方にいくに従い建物が先細りしている(図3-1中(a))
2. 画像周辺部に樽型歪みが発生し,直線となっていない(図3-1中(b))
3. 電線等の建物立面以外のノイズ情報が含まれる(図3-1中(c))


図3-1 GIMPへの写真データの入力と課題

そこで画像処理ソフト(GIMPAdobe Photoshopなど)を用いて,撮影した写真を加工し,テクスチャマッピング素材を作成する。加工作業として,歪み補正,ノイズ補正,切り抜きがある。

?歪み補正
デジタルカメラで撮影すると,樽型歪みや遠近歪みが生じることが多い。まず,樽型歪みは,イメージ全体を球状に(丸まって)見せてしまい,直線で構成される建物では不自然に感じられてしまう。樽型歪みは広角レンズを用いた場合によく見られる。次に,遠近歪みは,高い建物を見上げた状態で撮影したり,幅広の建物を斜めから撮影した状態で生じる。GIMPを用いての処理方法を図3-2,図3-3に示す。


図3-2 樽歪み補正。「フィルタ(図中円)」-「歪み」-「Lens Distortion」で歪み補正を行う


図3-3 遠近歪み補正。「遠近法ツール(図中円)」を用いて台形補正

・ここで示した画像処理ソフトは,一般的なソフトであり,上記のように作業者のスキルや感覚に依存する部分が多い。一方で,これらの歪みを補正する専用ソフト(PhotoFixLens, DxO Optics Proなど)があることも紹介しておく。


?ノイズ除去
・写真撮影時には,建物立面以外のノイズ情報(電線,街路樹,ガードレール,通行人,車など)が撮影されてしまう。これらを画像処理ソフトで,スタンプツール等を用いて除去する必要がある(図3-4)。
・先に述べた歪み補正は,定式化(ソフトウェア化)しやすいため,画像処理ソフトのある機能を使用して作業が比較的容易に可能である。一方,ノイズ補正は,スタンプツール等を使用しての地道な作業となりがちである。しかし,ノイズ補正の成果は,テクスチャ素材(建物表現のリアリティ)の質を高めることに直結する。よって,ノイズ補正をできるだけ丹念に行い,ノイズの無い状態を作り出すよう心がける必要がある。


図3-4 ノイズ除去。「スタンプツール(図中円)」を用いてノイズ除去


?切り抜き
・切り抜きツールを用いて,建物立面の輪郭に沿って画像を切り抜く(図3-5)。
・近年のデジタルカメラは,大きな画素数のものが多く,最終目標であるVR技術の現状を考えた場合にオーバースペックとなる。そこで,切り抜いた画像は,最大でも512pixelに調整する(図3-6)。また,画像を縮小する際はニアレストネイバー法以外を用いる。
・画像サイズは,256×128ピクセルや,128×512ピクセルのように,2のべき乗とする。調整する前のオリジナルデータは,必ず保管しておく。保存形式は,jpeg形式を基本とするが,窓や柵などで透過表現が必要な場合はbmp形式とする。この場合,透過させる部分は(R, G, B)=(0, 0, 0)とする。


図3-5 建物立面の切り抜き。建物の輪郭線を選択した上で,「画像(図中円)」-「Crop to Selection」ツールで,切り抜き


図3-6 画像サイズの縮小。「画像(図中円)」-「画像拡大縮小」で画像サイズ変更


テクスチャデータはこれで完成!


■ふくだぶろーぐ:都市建築VR制作マニュアル
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都市建築VR制作マニュアル2:建物写真撮影。
都市建築VR制作マニュアル3:写真加工によるテクスチャマッピングデータ作成。
都市建築VR制作マニュアル4:建物3Dモデル作成。
都市建築VR制作マニュアル5:建物3Dモデルへのテクスチャマッピング。
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