ふくだぶろーぐ

福田知弘の公式ブログです。

高松4町パティオ協議会広場デザインプロジェクト。

ここ3回ほど、高松4町パティオ協議会まちづくりイベントの様子をご紹介しました。
今回はこのデザインプロジェクトについて、ご紹介します。


対象となる広場は、高松市中心部でも類まれなオープンスペースであり、広場に建物が面して建つ、日本では珍しい小広場です。通行量が中央商店街の中でも多い場所のひとつですが、広場周辺は市民にとってあまり良い印象をもたれていません。それは、広場の入り口にある交番が広場と商店街の目線を遮るためなのと、そして広場内には花壇や標識などの工作物が必要以上に溢れ、多様な利用がしにくい状況であるからです。そこで、この場所を地域の人びとや訪問者に親しまれる「みんなの中庭」に再生させ、まちなかの活性化に寄与することを目指してきました。

高松に限らず、日本は都市中心部の活性化が急務となっています。まちづくり三法の改正も対策の一つですね。ただ、法改正をすれば十分な訳ではなく、具体的にどうやって人に来てもらうかを考えなくてはなりません。

課題解決策の一つとしては、地域住民や商店主が自らまちづくりに積極的に関与していき「元気な地域」であることを継続的に発信していくことが考えられます。地域住民や商店主にとっては、日頃からこの活動をするだけでも大変なのですが、仮に地元がこのような姿勢となった時に、地元に対する専門家の姿勢とは、「地域の人々のためにしてあげよう」ではなく、「地域の人々と一緒になって考えよう」であるべきでしょう。このようなコンセプトを実現しようとする試みが本プロジェクトの特長です。

広場整備は通常行政が事業主体となることが多いのですが、本プロジェクトでは、地域の商店街(南新町、田町、常磐町)や自治会(亀井町)が4町パティオ協議会を設立し、この協議会が事業主体として計画を進めています。また、整備後の維持管理やイベントの企画についても、協議会のメンバーが牽引役となるべく企画を進めています。

広場や街路という公共空間の魅力は、それに面する建物の利用方法やデザインにより飛躍的に向上するでしょう。そのため、広場整備の計画を立てる前に、広場に面する地権者により建物側のルールを「街並み協定」として定め、その一部を法的拘束力のある都市計画に位置づけました。これにより、建物所有者が変わるようなことがあっても、当初のコンセプトが継承できるような仕組みが整ったわけです。自らの資産の自由度を制限しても、まちが良くなるように取り組もうという関係者の決意が生まれたことも目に見えない成果といえるでしょう。

■一体感創出へ−田町広場地区計画承認(中四国初の住民提案型地区計画)
四国新聞H18.3.2掲載)

具体的な広場の計画は、花壇、標識、ベンチ、電柱、街灯などの工作物が雑然としている現状を打破するため「引き算のデザイン」をコンセプトとしています。緑陰を作り、シンボル的存在である樹木をできる限り残す一方で、小広場が多様な使い方に対応できるように、ベンチや花壇、照明などは取り外し可能な仮設工作物を検討しています。しかしながら、日本にはそもそも広場という概念はなく、広場といっても実は道路用地なので、オープンカフェなどの社会実験が各地で行われているものの、まだ仮設工作物を常設するのは設置許可が下りません。そこで知恵を絞っているところです。また、東西方向の歩行者動線をしっかりと確保するため広場の両サイドは通行スペースとしています。その間に生まれる広場中央スペースは、カフェテラスとし、パラソルの下で飲食することができます。

我々専門家は、「地域の人々と一緒になって考え」るために、通常よりも数多く協議会の方々と会議を設け、スタディを重ねてきました。大阪に住む専門家が250km離れた高松市まで20日に1度以上のペースで訪れている計算になります。またデザインスタディでは、ノートPCで稼動するVR(バーチャルリアリティ)システムを用いてきました。このシステムはご存知の方も増えてきたようですが、パソコン上に定義された三次元仮想空間をマウス操作により、検討者の見たい視点からリアルタイムに検討することができます。また、現況と計画案の比較や、昼景と夜景の比較などを様々な視点場から行うことができます。マウスドラッグにより、設計対象を移動・回転させることも可能です。このシステムは、専門家でない協議会のメンバーが容易に計画案を理解することができると、非常に高い評価を得ています。

本プロジェクトは現在設計段階ですが、近い将来には竣工するスケジュールで進めています。