ふくだぶろーぐ

福田知弘の公式ブログです。

都市とITとが出合うところ 第60回 デジタルサイネージ (1)

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図1. LEDデジタルサイネージ心理的影響実験:(a) 渋谷昼景,(b)大阪夜景,(c)実験装置, (d)LEDディスプレイ,(e)実験平面図,(f)まぶしさ量反応曲線,(g)不快さ量反応曲線

ビルファサードへの電子機器の組み込み

近年、ビルのファサード(建物の正面部分)には、電子機器が組み込まれるものが見られ、さらにそれらがネットワーク化されているものも増えてきた。デジタルサイネージはそのひとつであり、時間や場所に応じて適切なコンテンツを配信できる可変性、双方向機能による効果的な情報提供が可能であることから、ビルや都市空間の新たな表現方法や役割として期待されている(図1(a))。一方で、人間や周辺環境への影響などを検討しておく必要がある。

デジタルサイネージ

デジタルサイネージの定義は様々であるが、(一社)デジタルサイネージコンソーシアムは「屋外・店頭・公共空間・交通機関など、あらゆる場所で、ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するメディアの総称」と定義している1)。一方、文献2)では、広告効果と景観を調和させるための法的環境に関して調査するために、「広告や販売促進、プロモーション或いは公的なものを含めた情報提供に関するものに限定」してデジタルサイネージを定義している。本稿では、後者の定義を採用する。

デジタルサイネージは、従来の印刷による看板や案内板に代わる新しいメディアとして、平常時の広告・案内等の利用に加えて、災害時の情報伝達手段としても期待されている。その外観は、矩形の平面形状が大多数であるが、ロンドンのピカデリーサーカスには曲面状のサイネージが設置されており3)、ニューヨークのタイムズスクエアには3次元ロボットによる動くサイネージが設置されている4)。年月が進むにつれて、大型化、高解像度化する傾向にある。

LEDディスプレイの眩しさ、不快さ

デジタルサイネージを屋外に設置する場合、LEDディスプレイが光源として採用されることが多い。LEDディスプレイは、フルカラーを表示できるLED(発光ダイオード)が高密度に集まることで、一つの面となり、文字、静止画、動画を表示できる。LEDは、長寿命、省エネルギー性に加えて、高輝度の光源であり太陽光のような強い外光が当たる場所でも、視認性が確保できる。

一方、LEDディスプレイのデジタルサイネージ(以下、LEDデジタルサイネージ)が普及していくと、高輝度ゆえんの光害など、夜間景観への影響が懸念される。例えば、大阪市内での現地調査では、5000 cd m-2のLEDデジタルサイネージが存在していた(図1(b))。LEDデジタルサイネージは光の指向性が強く、人が直接眺めるものであるから、グレアによりまぶしさや不快感などの悪影響が予想される。

LEDディスプレイの心理的影響実験

そこで、人がLEDディスプレイを眺めた際の心理的影響を明らかにするための印象評価実験を行った5)。概要は、以下の通りである。

  • LEDディスプレイ(3000 mm × 5400 mm)を部屋の壁に設置してデジタルサイネージによる光環境を構築した(図1(c)(d))。
  • LEDディスプレイに提示する映像刺激として、無彩色の光源色で16、32、64、128、256、512、768、1024、1536、2048 cd m-2の10段階の光源輝度をそれぞれ10秒間表示する映像を作成した。
  • 被験者の視認距離として、水平静視野の飽和角である60°(結果、被験者—ディスプレイ距離:4mとなる)と、その半分となる30°(同:10m)の2つの条件を設定した(図1(e))。
  • LEDディスプレイの背景は、反射光による輝度が若干存在するものの、ほぼ真っ暗である。LEDディスプレイと背景との輝度の対比は大きく、夜間の住宅地のような環境が想定できる。
  • 20代から60代までの全年齢層,ならびに男女の性別を網羅した52名が被験者として参加した。まぶしさと不快さに対する7段階評価により実施した。

実験結果では、例えば1000 cd m-2 でみると、視認距離 4 mで 5 割の人々がまぶしいと感じ、3 割の人々が不快だと感じる結果が得られた。視認距離 10 mで 2割の人々がまぶしいと感じ、1.5 割の人々が不快だと感じる結果が得られた(図1(f)(g))。

参考文献

  1. (一社)デジタルサイネージコンソーシアム:https://www.digital-signage.jp/about/
  2. (社)日本機械工業連合会・(財)デジタルコンテンツ協会:平成22年度景観と調和したデジタルサイネージに関する調査研究報告書,2011.
  3. The New Piccadilly Lights: https://piccadillylights.co.uk/
  4. 3D Coke Sign in Times Square https://vimeo.com/229199452
  5. 福田知弘,松井孝典,長町志穂: デジタルサイネージ景観向上のための光源輝度を指標としたLEDディスプレイの心理的影響評価,日本建築学会東海支部研究報告書,第53号,321-324,

※URLはいずれも2019年3月2日に参照した。

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1904machinami_FukudaFinal.pdf

一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2019年4月号)

日本建築学会 情報シンポ 2018 の動画を公開しました。

日本建築学会 情報シンポ 2018 の動画を公開しました。

情報シンポ2018の会場でお話し頂いた内容全て公開することは至りませんが(その意味ではやはり会場で聞いて頂くのがベストですね)、当日お越しになれなかった方、建築情報分野ってどんなんだろう?と思われている方、是非ご覧ください!

★01-オープニングセッションー倉田成人(筑波技術大学

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★02-「AI・ロボティックス:環境計画としてのロボットデザイン」ー松井 龍哉 氏

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★03-「AI・ロボティックス:ダイアログ」ー山田 誠二 氏、松井 龍哉 氏、藤村 龍至 氏

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★04-クロージングセッションー福田知弘(大阪大学

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次年度より2年間の情報シンポの主査を引き続き仰せつかることになりました。2019情報シンポは、12/12-13です。まだまだ盛り上げて、国内外の皆さまを迎えたいです。引き続き、どうぞよろしくお願いします。

また、建築学会・情報システム技術委員会の小委員会のひとつとして、建築・都市VR・MR小委員会を立ち上げ、4月より活動を開始することになりました。日頃の研究活動に加え、全国大会での研究協議会(9/3-6)などを企画していきます。リクエストなどございましたら、是非お願いします。

都市とITとが出合うところ 第59回 VRサマーワークショップ イン ウェリントン (2)

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VRサマーワークショップ イン ウェリントン

VRワークショップ DAY1

ビクトリア大学ウェリントン テアロキャンパスでは、進行役の小林佳弘氏(アリゾナ州立大学)より、今回のワークショップ・テーマ「ペチャクチャ・ナイト」が披露された。これは、48時間で新たなVRシステムに関するアイデアをまとめ、その一部をシステム開発し、プレゼンテーションするものである。このアイディアソン+ハッカソンの進め方は昨年とほぼ同じであるが、プレゼンテーションで用意するスライドは20枚厳守で、各スライドは20秒で話すことというルールが加わった(20秒で自動的に次のスライドへ。持ち時間は400秒=6分40秒)。

アイディアソンでは、トレーシングペーパーがメンバーに配られ、新たなVRプロジェクトの提案内容を書きこんでいく。そして壁に貼り出して、アイデアを順に発表していく。他のメンバーや㈱フォーラムエイト開発スタッフが質問や改良案を出しあい、ブラッシュアップしていく。

DAY2―3

DAY2の朝には共通の開発テーマとなりそうな提案を結び付けて、以下のような6チームとなった。

チーム毎に、開発プロジェクトが本格スタートした。途中、ウェタ・デジタル社 Kevin Romond氏が「A Look Inside Weta Digital: Technology in the Service of Storytelling」と題して、オークランド大学 Uwe Rieger氏が「Architecture per Second」と題してそれぞれ基調講演した。

ウェリントンは、映画産業の都と呼ばれ、世界有数の映画技術と才能が集結している。中でも、ウェタ社はニュージーランドの若き映画制作者たちが1993年に立ち上げた企業である。Romond氏の講演では、映画「アバター」「キングコング」などウェタ・デジタルが手がけた映画のデジタル処理技術を中心に解説がなされた。

DAY3夕方からは、ウェリントン郊外のSchnabel邸に移動して最終プレゼンテーションが行われた。Schnabel氏の手料理と段取りの凄さには脱帽した。これぞ、ベスト・プレゼンテーションと呼べるかもしれない。庭で眺めた南十字星は一生の思い出になりそうだ。

DAY4

朝からテクニカルツアーへ。まず、ウェタ社のスタジオ・ツアーに参加。映画で使われたパーツやフィギュアの実物(これぞVR!?)を目の当たりにした。その後、ビクトリア大学ウェリントン ミラマー・クリエイティブ・センターを訪問。最新のモバイル型VRシステムやスタジオが整備されている。

国会議事堂の閣僚執務棟はハチの巣と呼ばれる外観。前面の広場には、イギリス連邦王国16ケ国の国旗が並ぶ。旧セント・ポール教会はウェリントンで最初に作られた英国国教会の大聖堂。1866年に建造されたゴシックスタイルの木造教会で、ステンドグラスが印象的であった。

帰りの機内でウェタ・デジタルの代表作「アバター」を改めて観たことは言うまでもない。

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1903machinami_FukudaFinal.pdf

一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2019年3月号)

CFP: Special Issue "Computer-Aided Architectural Design" (Technologies ISSN 2227-7080; ESCI-WoS)

Technologiesという学術雑誌の特集号 "Computer-Aided Architectural Design"にて論文を募集することになりました。Full paperの〆切は9月30日ですが、Acceptされた論文は順に掲載されます。ご検討の程、どうぞよろしくお願いします。
 
Call for Papers
"Computer-Aided Architectural Design
A special issue of Technologies (ISSN 2227-7080).
Deadline for manuscript submissions: 30 September 2019 (Accepted papers will be published continuously in the journal (as soon as accepted))  
ESCI-WoS (Emerging Sources Citation Index in the Web of Science Core Collection) 

Flyer (PDF)

 
*******
Dear Colleagues,
 
Computer-aided architectural design (CAAD) has evolved over the last decade due to environmental changes and rapid technological advancement. Since the so-called “super-smart society” is going to become a reality in the near future, CAAD is currently exploring its expanded new roles and approaches, such as generative design, additive manufacturing, smart buildings and cities, seamless simulations for evidence-based design, intuitive and interactive visualization for participatory design, digital twin, telepresence, robotic process automation, and digital conservation, in addition to the further upgraded architectural design and communication medium, which were its original major roles. CAAD also covers impact, transformation, and education for architects, designers, engineers, and citizens in the future architecture and building fields.
In this Special Issue, we seek contributions in the field of CAAD in a broad sense. CAAD covers interdisciplinary fields which include natural science, arts and humanities, and social science. We invite your submissions related to but not limited to the keywords below.
If you are not sure if your paper fits the focus of this Special Issue, please contact the Guest Editor.
 
Assoc. Prof. Dr. Tomohiro Fukuda
Assoc. Prof. Dr. Taro Narahara 
Guest Editors
 
Manuscript Submission Information
Manuscripts should be submitted online at www.mdpi.com by registering (https://susy.mdpi.com/user/register) and logging in to this website (https://susy.mdpi.com/user/login). Once you are registered, click here to go to the submission form (https://susy.mdpi.com/). Manuscripts can be submitted until the deadline. All papers will be peer-reviewed. Accepted papers will be published continuously in the journal (as soon as accepted) and will be listed together on the special issue website. Research articles, review articles as well as short communications are invited. For planned papers, a title and short abstract (about 100 words) can be sent to the Editorial Office for the announcement on this website.
 
Submitted manuscripts should not have been published previously, nor be under consideration for publication elsewhere (except conference proceedings papers). All manuscripts are thoroughly refereed through a single-blind peer-review process. A guide for authors and other relevant information for submission of manuscripts is available on the Instructions for Authors page. Technologies is an international peer-reviewed open access quarterly journal published by MDPI.
 
Please visit the Instructions for Authors (https://www.mdpi.com/journal/technologies/instructions) page before submitting a manuscript. The Article Processing Charge (APC)(https://www.mdpi.com/about/apc) for publication in this open access (https://www.mdpi.com/about/openaccess) journal is 350 CHF (Swiss Francs). Submitted papers should be well formatted and use good English. The authors may use MDPI's English editing service (https://www.mdpi.com/authors/english) prior to publication or during author revisions.
 
Keywords
- Artificial intelligence and machine learning
- Smart buildings, smart cities
- Virtual, augmented, and mixed reality (VR/AR/MR)
- Digital fabrication and robotics
- Telepresence, collaborative design
- Digital twin
- Generative, algorithmic, and parametric design
- Internet of Things (IoT), Big Data
- Performance-based design
- Interactive and responsive design/environments
- Human-computer interaction
- Computational design education
- Digital conservation, digital heritage
- Building information modeling (BIM)
- Modeling, simulation, and analysis
- Laser scanning, photogrammetry, structure from motion (SfM), point clouds

OU-EXPLORER【i-Constructionプロジェクト】募集案内です。

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大阪大学では産学共創プロジェクトが沢山走っています。下記はそのひとつで、関西テレビ放送様と株式会社エアロジーラボ様(ドローンのベンチャー企業)より産学共創本部に提案があり、縁あって、スーパーバイザを務めさせて頂くことになりました。

企業・行政と個別研究者・研究室との共同研究はよく行われていますが、OU-EXPLORERはまず大学全体として受け、相応しい研究者が指名され、全学から学生を募集して進めるプロジェクトです。

対象は全阪大生の有志、アルバイト料を受け取りながらプロジェクトに参加することができます。

基本的に学生チームが主導で活動をして(企業のニーズを受け止めつつ)、必要に応じて私がアドバイスさせて頂く進め方を想定しています。

参加したい学生さんは、下記の要領に従い、応募をお願いします。現時点のスキルに関わらず、このプロジェクトを通じて成長したい方に参加して頂ければ幸いです。興味を持っていそうな阪大生に声掛けをして頂いても構いません。

また今後、このようなプロジェクトをやってみたい企業の皆さまはご相談頂ければ幸いです。

どうぞよろしくお願いします。

***
共創人材育成部門では「OU-EXPLORER」という取組みを実施しております。これは、若手研究者・大学院生からなるチームが、新規テーマ開拓を考えるクライアント(企業等)の依頼をもとに、関連する研究成果および研究者を領域横断的に探索し、クライアントを交えたディスカッションを経て報告書を提示する取組みです。別の言い方をすれば、大学にいながらにして企業の研究活動に参画できる「インターンシップ・オン・キャンパス」です。

詳しくは上記の資料および、
http://www.uic.osaka-u.ac.jp/target/company/co-creation/
も合わせてご覧頂ければ幸いです。

今般、在阪テレビ局および関連ベンチャー企業から「安全で生産性の高い土木建設システムの構築に関する研究」というテーマが提示されました。詳細につきましては、添付の課題概要書をご覧下さい。

募集要項は下記になります。奮ってご応募下さい!

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□業務内容
・文献/Web調査、有識者ヒアリング(5名程度)
・内リーダー業務(1名)

□勤務時間
・プロジェクト期間は3ヶ月程度(2019年3月~2019年5月予定)
・4~6時間/週(各自の都合のつく時間に勤務して下さい)
・キックオフ、中間報告、最終報告はチームメンバーが一同に会して実施します
・週1回、1時間程度のミーティングを実施する場合もあります

□報酬(規定額)
 時給950円
※交通費等発生する場合は大学規程に従って支給します

□応募締め切り
2月20日 必着(充足し次第締め切る場合があります)

□応募方法
簡単な研究概要(A4一枚程度)を添付の上、以下の①~③をメールに記載し、ou-e@uic.osaka-u.ac.jpまでお送りください。
①氏名
②所属研究科、研究室
③学年

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追記

学生さんから早速質問があったので共有しておきます(事務局と確認済み)。

Q1.「簡単な研究概要(A4一枚程度)」とは今回のプロジェクトテーマ「安全で生産性の高い土木建設システムの構築に関する研究」に合致した内容であるべきか?

A1. 簡単な研究内容とは、
「今回のプロジェクトに必ずしも合致した内容でなくても、応募される学生さんがこれまでに実施してきた内容で結構です」とのことです。また、「特に、込入った内容でなくても構わない」とのことです。
これを受けての私のコメントですが、
できれば、プロジェクトに関連付けて書いた方が良いでしょうが、関連付けられなければ無理する必要はないですし、これまで取り組まれた経験(演習等)の内容を書かれると良いかと思います。
よろしくお願いします。

Q2. 全員が出席する会議などはどのくらいのペースで行われるのか?土日がメインになるのか?

A2. 以下となります。

■キックオフミーティング、中間報告、最終報告 → 基本的に全員が揃う日を調整(最悪欠席も止む無し)
■毎週の定例ミーティング → キックオフミーティングの際に学生全員が参加可能な日時を決定(突発的な事情で欠席は止む無し)
■それ以外の活動時間 → 各自で自由になる時間を充てる

Q3. 仕事の進め方について(Q2. と関連)

1.原則週1回1時間程度、場所は吹田キャンパスのどこか(テクノアライアンス棟の可能性大)で学生メンバー+事務局で定例ミーティングをします。内容は先週の活動状況の共有と次週の活動方針の確認です。

2.上記以外に週4時間の調査活動(Web、文献、ヒアリング等)およびレポート作成(パワポ2~4枚程度)をご自分が自由になる時間・場所を使ってやって頂きます。

 勤怠管理方法は1の際にテクノアライアンス棟2階の出勤簿にサインして頂くのと、2の始業・終業時に事務局あてメールで通知頂く手法を採ります。

都市と建築のブログ Vol.44 ウッチ:文化観光都市へ up!

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初日の出 平成31年元旦

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eCAADe2018 ウェルカムパーティはユニーク・ベニュー(Unique Venue)での開催。大好きなショパンを演奏してくれました

新年明けましておめでとうございます!2019年もどうぞよろしくお願いします。

都市と建築のブログ 第44回目(2019年1月号)はポーランド・ウッチをご紹介します。19世紀、それまでの小さな町から繊維産業の工業都市として急速に発展し、ポーランドマンチェスターと呼ばれたウッチ。昨秋、eCAADe2018 国際学会の開催都市となりました。

NAVERまとめにも都市と建築のブログの過去記事をアーカイブしています。

matome.naver.jp

■都市と建築のブログ バックナンバー

都市とITとが出合うところ 第58回 VRサマーワークショップ イン ウェリントン (1)

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VRサマーワークショップ イン ウェリントン

冬のサマーワークショップ

2019年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2018年を振り返れば、VR/AR/MR(人工現実/拡張現実/複合現実)、BIM、コンピュテーショナルデザイン、i-Construction、AI(人工知能)、デジタルツィンなどの話題と接する機会は明らかに増えたように思う。また、継続的に参加しているCAAD(Computer-aided Architectural Design)分野の論文投稿は国際スケールで見てここ数年飛躍的に増えている。

2018年の夏、恒例のVRサマーワークショップに参加した。世界各国からの建築・土木・都市計画系VR研究者による「World16」のメンバーが最先端のVR活用について議論する研究会であり、2008年から続いている。

今年は、World16の一人、マーク・アウレル・シュナベル(Marc Aurel Schnabel)氏が教鞭をとる、ビクトリア大学ウェリントンニュージーランド)で開催することになった。南半球で初めてのサマーワークショップであり(南半球の7月は真冬であるが 笑)、6か国から約30名が集まって行われた。2回に分けてご紹介しよう。 

ウェリントン

ニュージーランドは、日本のような島国であり、二つの大きな島(北島、南島)と多くの島々からなる。イギリス連邦王国16ケ国の一国。オーストラリアのすぐ隣にありそうな印象だが、実は2000kmも離れている。総人口は約470万人であり、ヒトよりもヒツジの方が圧倒的に多い。主要都市は、オークランドクライストチャーチ、そして首都ウェリントンである。

ウェリントンは北島の南西端に位置し、北島と南島を分けるクック海峡に面した天然の良港を有する。緯度は南緯41度であり、北緯でいえば青森県むつ市イスタンブール、ローマの南付近に相当する。人口は郊外を含めて約40万人である。

今回、ウェリントンに滞在したのは7月上旬。日本でいえば真冬に当たるが、気温は10℃であり、思ったほど寒くはなかった。時差は日本より3時間早い(サマータイムは+4時間)。2018 FIFAワールドカップの決勝トーナメントの頃であり、日本であれば深夜にキックオフであるが、ウェリントンでは朝6時に始まるとあって朝食会場は盛り上がっていた。

ウェリントンは、中心部がコンパクトで歩いて観光できる街。海と山があって自然が豊か。また、世界でも有数のコーヒーの街。フラットホワイトはよくいただいた。

DAY1

朝から、ビクトリア大学ウェリントンのメイン、ケルバーンキャンパスにある、テ・ヘレンガ・ワカ・マラエへ。マラエとはニュージーランドの先住民マオリ族の集会施設であり、大学の施設である。ケルバーンキャンパスのメインストリートにあるゲートをくぐると、緑あふれる中庭があり、その前面にマラエは建つ。入り口で靴を脱ぎ、彫刻が施された建物内部に入る。

まず、「ポフィリ」と呼ばれる歓迎の儀式。その中で執り行われた、ホスト(ビクトリア大学ウェリントンのメンバー)とゲスト(World16とスポンサー企業フォーラムエイトのメンバー)の間との挨拶「ホンギ(額と鼻を軽くこすり合わせる)」は貴重な体験であった。

そして、フォーラムエイト代表取締役 伊藤裕二氏、ビクトリア大学ウェリントン 建築・デザイン学部長 マーク・アウレル・シュナベル氏よりオープニング・トークが行われた。さらに、ビクトリア大学ウェリントン コンピューテーショナル・メディア・イノベーションセンター(CMIC)ディレクター 安生健一氏(Prof. Ken Anjyo)が「CG: Computational Media for Industries(産業分野のためのコンピュータメディア)」と題して基調講演した。ウェリントンは映画産業が盛んであり、安生氏は、昨年12月に東京で開催されるSIGGRAPH Asia 2018のカンファレンス・チェアも務められた。マラエの中で行われたこれらのイベントは、普通の会議室とは異なり、神聖な雰囲気の中で行われた。

バスに乗って、建築・デザイン学部があるキャンパス・テアロキャンパスへ。

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1901machinami_FukudaFinal.pdf

一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 「まちなみ」2019年1月号)

2018 戊戌(つちのえ・いぬ)この一年

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2018 戊戌 この一年

(ほぼ)本業以外での活動・思い出2018をまとめてみました。自然災害の恐怖を感じると共に、イベントの企画が多かった一年だなぁ。

  • 自然災害・大阪北部地震(6月):朝一、液晶ディスプレイが近づいてきた。当初、前日暑かったのでまだクラクラしているのかと。身の危険をかなり感じた出来事。現在でも周辺はまだ、ブルーシートの屋根が一杯。
  • 自然災害・台風21号(9月):最盛期は竜巻状態。前の建物屋根が剥離される瞬間。通過後、関空の復旧状況にも悩まされた(ヨーロッパ出張)。
  • 自然災害・北海道地震(9月):台風直後の出来事。丁度、ソフトボール部が七帝戦で北海道滞在中。試合は全て中止となかったが、怪我なく帰阪できてよかった。
  • 自然災害・酷暑(7-8月):外での作業、応援はしんどかった。7月豪雨も講義実施に悩まされた。
  • 環境工学科50周年記念行事(12月):無事に終了。他、環境アラ23期長野合宿は楽しかった(9月)。
  • 体育会ソフトボール部顧問就任:21年ぶりに1部昇格!
  • CAADRIA2018(5月):編集長を仰せつかった論文集が無事発行。途上、国際社会は色々とあるものだと再実感。
  • 日本建築学会 情報シンポ2018(12月):無事に終了。海外から基調講演者招へい、海外から参加者増。同時通訳など、新たな試みを始めた。
  • 日本建築学会 建築・都市VR・MR小委員会 立ち上げ:来年度より本格的に活動します。どうぞよろしくお願いします。
  • ベトナムホーチミン建築大学 講演(8月):日曜日にも関わらず、自主的な参加者が多く、その熱心さに驚いた。講演は、台湾亜洲大学、台湾女子高級中学(いずれも来学)、豊中市自治会、JUDI、徳島神山町4KVR映画祭、国際VRシンポジウムなどで。
  • eCAADe2018(9月):ポーランド・ウッチ。都市と建築のブログ1月号で紹介します。
  • 水木しげるロードリニューアルオープン!(7月)境港市 水木しげるロードリニューアル 夜間景観デザインチームは、第2回羽倉賞 奨励賞 受賞!
  • 香港中文大学 修士論文指導。国際研修プログラム@大阪・近畿 受入れ 3年目
  • 加古川SSH豊中市南部コラボ、吹田市教育委員会、大阪・神戸など景観・デザイン行政、橋梁模型コンテスト、学生クラウドプログラミングワールドカップ
  • 都市と建築のブログ連載(2009.10-)、都市とITとが出合うところ連載(2014.4-)
  • 都市計画学会全国大会スタッフ(11月)
  • 民生児童委員2年目(地域見守り、敬老行事)
  • もうひとつの旅クラブ(ご来光カフェ)、おやじの会(餅つき)
  • 桂離宮・圓通寺へ訪問(7月)
  • 愚犬と散歩(ほぼ毎日)

都市とITとが出合うところ 第57回 香港中文大学 国際研修プログラム 2018(3)

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大阪木材仲買会館

香港中文大学、大阪大学のメンバーと建築巡り。まずは、大阪木材仲買会館へ(大阪市西区南堀江)。

環境保護や森林資源の維持・活用の観点から、木造建築は近年ますます注目されている。一方、都心の密集地域では耐火建築物が要求されることが多く、特に構造体への木材利用は難しい。このような課題解決のため、竹中工務店では、構造材・仕上材ともに木を用いる3層式の耐火集成材「燃エンウッド」を開発している。大阪木材仲買会館は、燃エンウッドを用いた初めての作品として、2013年春に完成した。

実はこの建物とは、完成したての頃、一人でまち歩きをしていたら偶然に出会ったのが由縁である。鉄筋コンクリートのビルが並ぶ通りを歩いていると、この、木をふんだんに使ったファサードが眼前に広がった。桜の季節は過ぎて青葉が繁りだしていた(今回もそうなのだが)。立ち止まってじっと眺めていると、スタッフの方が中から出てこられて、雑談していると、なんと建物内へ案内して頂けた。この時の感動を香港や阪大のメンバーに伝えたいと思ったのが今回の訪問の動機となった。

敷地は以前からの桜を取り囲むように建築され、シンボリックな庇をはじめとして木を印象付けるファサードである。しかし、木のメリット・デメリットに対しても細やかに配慮されている。例えば1階は、津波など浸水時の耐性を高めるべくRCとしている。また、隣の建物と向き合う部分には、火災による延焼時に木材を保護するためにRC壁を設けている。内部空間は、木の表情や香りに溢れていた。

香港のメンバーは、木造建築に対する興味に加えて、最上階にお稲荷さんが置かれていることに興味津々で質問攻めにあった。この説明が最も苦労したかもしれない。

枚方T-SITE

西長堀から大阪メトロと京阪電車枚方市へ。枚方T-SITEを訪問した。

枚方市は、大阪と京都の中間点に位置し、高度経済成長期に人口が急増した典型的な郊外都市である。人口は40万人を数える。枚方市駅前は、TSUTAYAの1号店、蔦屋書店枚方店が1983年に誕生した地。

郊外都市の駅前は、郊外のロードサイドショップや大型量販店の影響で、地位が相対的に低下していることが多い。一方、駅前の立地特性として、公共交通の利便性の高さは言うまでもなく、歩いて楽しめる魅力もある。枚方T-SITEは、人々が居心地の良さを感じてもらえる「街のリビング」をつくりだすべく、計画されたものである。

JENGAは、同じサイズの積み木を組んで作ったタワーから片手で一片を抜き取り、タワーが倒れないように最上段に積み上げていくテーブルゲームである。枚方T-SITEは、多様な生活提案を内包するボリュームをJENGAのように積み上げた。本に囲まれた吹き抜け空間は居心地の良く、外観、内観のシンボルとなっている。見学では、まず竹中工務店の設計担当者にレクチャーして頂き、その後、T-SITE内を自由に見学。計画資料や設計図面を見せて頂けたことは、貴重な機会になった。

緻密に計画・設計され、粘り強く協議しながら斬新な建物を実現していく担当者の姿は、国内外を問わず学ぶ人たちにとって魅力的に映ったようだ。

コンピュテーショナルデザインとBIM

建築の計画・設計段階から生産・運用段階までをコンピュテーショナルデザインやBIMにより業務化する動きが、社内の一部チームだけでなく、全社的な動きとなってきた話を聞くようになってきた。

本誌5月号で紹介した日本建築学会 情報シンポ2018はいよいよ今月6日・7日に迎える(公式HP http://aijisa2018.org/ )。74編の研究・技術発表に加えて、以下の基調講演を開催する。

■12月6日(木)15:00-17:30/建築会館ホール

人工知能AIの現在と社会導入の可能性」
山田誠二(国立情報学研究所総合研究大学院大学教授/人工知能学会前会長)

「環境計画としてのロボットデザイン」
松井龍哉(フラワー・ロボティクス代表取締役社長/ロボットデザイナー)

<ダイアローグ・コーディネーター>
藤村龍至東京藝術大学准教授)

■12月7日(金)14:50-17:30/建築会館ホール

「アジア、アセアン地域(シンガポール、マレーシア、中国、カタール、日本)のBIMの挑戦」
Japri Maming(Redstack社CEO、共同創設者)

「デザイン分野におけるコンピュータ支援技術の応用」
Seonwoo KIM(Syntegrate社オーナー兼ディレクター)

基調講演はYouTube無料ライブ配信する計画である(URLは公式HP参照)。会場までお越し頂けない場合にはご覧頂ければ幸いである。

PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1812machinami_FukudaFinal.pdf

大阪府建築士事務所協会「まちなみ」2018年12月号)

CPWC グランプリはパキスタンのチームが受賞。

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CPWC グランプリはパキスタンのチームが受賞。阿部祐二さんとパックンの掛け合いインタビューはさすがでした。

f:id:fukuda040416:20181122091317j:plainCPWC最終審査会オープニング。家入龍太さんが司会。CPWC2018の募集開始からこの最終審査会に至るまでの経緯を紹介させて頂きました。

f:id:fukuda040416:20181122091257j:plain■CPWC最終審査会プレゼンテーション。最終審査に残った6チームが各2分でプレゼンテーション。

CPWC(学生クラウドプログラミングワールドカップ)の最終審査会が先週東京で行われました。グランプリはパキスタンのチームが受賞。今年は自動運転と防災シミュレーションに関して学生チームとは思えない質の高いシステム開発も多く集まり、例年以上に丁寧な審査が必要でした。

CPWCは国別対抗ではないのですが、海外の学生たちのシステム開発能力のパワーに日本は押されていることを毎年感じてしまいます。我が国では2020年度から小学校でプログラミング教育の全面実施に向けて準備が進められておりますが、CPWCのような応用分野に辿り着くには…まあ、来年に期待しましょう。

受賞結果 The 6th Cloud Programming World Cup 第6回 学生クラウドプログラミングワールドカップ