都市とITとが出合うところ 第54回 ご来光カフェ
ご来光カフェ風景 1) ご来光の瞬間。スタッフも思わず手を止めてしまう。2) 美しい朝焼け。しかし、ご来光は望めず。自然のいたずらに一喜一憂。3) ご来光の撮影スポットはデッキの上、水辺近く、とお好みで。4) 全景。水上クルーズも出航間近。5) 本日のスタッフボード。6) カフェ厨房。得意技を活かし、毎日の役割分担を綿密に練って運営している。7) 筆者所属研究室の学生達が遊びに来てくれた。
ご来光カフェ2018 フライヤー
都心でご来光を眺める
大阪のど真ん中・中之島では10月1日から8日にかけて、生駒山から昇る朝日を望めることをご存知だろうか?日の出の位置は刻々と変化するため、ご来光は9月や10月も半ばを過ぎるとビルの陰に隠れてしまうのだが、10月1日朝6時頃には生駒山から顔を出して高層ビルに遮られることもなく、土佐堀川から眺めることができる。ビルや土木構造物などの人工物が集積した大阪の都心部において、自然、それもご来光を望む貴重な眺望景観である。
ご来光カフェ
NPO法人もうひとつの旅クラブ(以下、旅クラブ)は「ご来光カフェ」を大阪水上バス淀屋橋港の桟橋で企画・運営している(協力:大阪水上バス株式会社)。これは、市民共有の資産である「中之島の水辺」を舞台に「都心の自然」という魅力の発掘を行い、水辺という公共的空間の過ごし方や使い方を多様な側面から提案し、各人それぞれの「中之島時間」を発見していただくことで、ひとりでも多くの方に中之島の豊かな普段使いをしていただくことを目的としている。ご来光カフェは2006年からはじまり、年々、工夫を加えながら、今年は13年目を迎える。主な実施内容は以下の通りである。
- 大阪水上バス淀屋橋港桟橋を装飾し、テーブル・椅子を設置してご来光を眺めるカフェを営業し、飲み物、軽食を提供する。
- 水都号・アクアminiによる水上クルーズを実施する。2015年にご来光カフェ10年目を記念して開始したスペシャルご来光クルーズを継続実施(5:50出港)、その他の時間帯は6:30より随時運航する。
- 専用サイト [1, 2] により広報活動を継続的に行う。営業日誌も公開する。
- ご来光カフェに対する来訪者の声を集めるため、メッセージボードをカフェに設置する。
- 継続的な開催のための賛同者・ボランティアスタッフを募集する。
ご来光カフェ2017の様子(旅クラブ総会資料より)
- ご来光カフェは明らかな雨天時には休業となる(専用サイト [1, 2] で営業の有無を日々更新)。2017年、休業日はなかったが、8日間のうち6日が曇りや雨の日となり、総来訪者数は560名であった(昨年比30名減)。一方、晴れた2日はいずれも日曜日であり、150名以上が来訪した(例年の休日と同程度)。
- 水上クルーズの乗船数は307名であった。これは、来訪者のうち55%が乗船したことになり、ご来光カフェ史上で最も高い割合となった。
- マスコミの取材は、船場経済新聞に掲載された[3]。また、FMCOCOLO、毎日放送などで紹介され、ラジオリスナーの来訪もあった。また、フェイスブックでのご来光カフェ2017開催告知(8/25実施)に対しては、リーチ14,552人・シェア76件であった。これは昨年比2~3割減であったが、SNSでの情報発信は今後も広報の要であろう。
- メッセージボードには、176のメッセージが寄せられた。ご来光が見られた日も、そうでない日も、ご来光カフェの雰囲気を来訪者それぞれが楽しまれた様子が窺え、また訪問したいといったコメントが多く寄せられた。
- ボランティアスタッフについて、新規スタッフに7名応募があり、例年より多い数であった。フェイスブックと旅クラブ公式サイト[4]、また人づてに積極的に呼びかけたことに依ると思われる。これを受けて、2017年は新スタッフと経験スタッフの協力の下、平均約17人のスタッフで運営することができた。
ご来光カフェ2018
今年のご来光カフェは、例年通り10月1日~8日で開催することが決定している。大阪の水辺の魅力を伝えたいというご来光カフェの原点に立ちかえり、それぞれのボランティアスタッフがどこまでの活動ができるかを確認し合いながら、新たなご来光カフェの姿を模索していきたい。
尚、今年は、水上クルーズが最終年となりそうである。是非、いらしてください。
参考URL
[1] http://sun.ap.teacup.com/goraiko/
[2] https://www.facebook.com/goraiko/
[3] http://semba.keizai.biz/headline/770/
[4] http://www.tabiclub.org
PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1809machinami_FukudaFinal.pdf
都市とITとが出合うところ 第53回 CAADRIA 2018(2)
はじめに
この1ヶ月ほどの間、大阪北部地震、平成30年7月豪雨と自然災害が立て続けに発生した。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災され不自由な生活を余儀なくされている皆様に心よりお見舞い申し上げます。
ローカル食堂
先回に引き続いて、清華大学で行われたCAADRIA 2018国際会議にまつわる話題を取り上げたい。今回は北京の様子を中心に。
ホテルから清華大学へは約2kmの道のりを歩いて学会へ通った。話題のコミュニティサイクルでの通勤・通学など朝の風景が色々と近づいてくる。ローカルな食堂は平日の朝飯時、地元の人々で溢れかえっており、店の中へはとても入れそうになかったが、気になっていた。学会最終日は土曜日にあり、店に朝早く行ってみると空いていた。英語もスマホも通じない中、玉子スープを注文すると「小籠包は要らないですか?」と尋ねられた(気がした)ので、「では1個!」と注文したら、積みあがった小籠包のひと皿を出してくれ、中には10個も入っていた。思わず「Too much!」と言ったら半分だけの器に変更してくれた。言葉が通じたのか、筆者の焦った空気が通じたのか…かなり美味しかったのは確かである(図1ー3)。
スマホ決済
このローカル食堂は現金で問題なく支払うことができたが(RMB9=JPY160)、中国は電子マネー化が爆発的に進んでいる。その主役は、支付宝(アリペイ)や微信支付(ウィーチャットペイ)であり、店が用意したQRコードにスマホをかざせば決済完了となる。但し、スマホ決済は、中国国内に銀行口座を開設していなければならないなど、外国人には敷居が高い(図4)。
よって訪問当時、筆者はこのスマホ決済サービスを使うことができなかった。つまり、タクシーやコミュニティサイクルなどスマホ決済しかできないサービスはそもそも利用できない「支払い難民」状態になってしまう。ようやく最近は外国人でも利用可能になってきているようである。
胡同
北京の旧城内を中心に点在する細い路地のことを胡同という。胡同の両側には伝統的家屋建築である四合院が建ち並んでいるが、近年の急激な市街地開発と北京オリンピックの整備(図5, 6)でその多くが取り壊された。
紫禁城の西側辺りの胡同を歩いたのだが、四合院の入口や壁の工事があちこちで行われていた。観光化に向けた景観整備のように思われた。それでもこの辺りは古い雰囲気がまだ残されており、狭い路地を通り抜けられるよう三輪車での配達や、住宅の入り口に置かれた牛乳の配達箱は懐かしい。夕方になると、井戸端会議がどこともなくはじまった(図7, 8)。
恭王府
中国における現存する王府の中では、最も無傷で保存されてきた清朝の王府。清朝の貴族(恭親王奕訢)が邸宅の最後の持ち主となり、「恭王府」と改められた。屋敷と庭園からなる(図9, 10)。
SOHO
建築家ザハ・ハディッド氏が北京市内に2つのSOHOビル群を残している。
銀河SOHOは、紫禁城の東2.5km、地下鉄・朝陽門駅の傍にある。丸い団子のようなフォルムをした4つのビルが並び建つ。各ビルはブリッジで繋がっており、店舗やオフィスが入っている(図11)。
望京SOHOは、北京市内の北東部、首都国際空港に向かう道中にある。有機的なフォルムをした3つのビルが独立して建ち並んでおり、ビルの高さは銀河SOHOよりも高い(図12)。
また、北京南西部の麗澤という地に、麗澤SOHOが新たに建設中である。
PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1808machinami_FukudaFinal.pdf
都市と建築のブログ Vol.42 沖縄:行逢りば兄弟 up!
早いもので2018年も半分が過ぎました。都市と建築のブログ 第42回目(2018年7月号)は沖縄をご紹介します。沖縄を初めて訪問したのは1979年、もう40年前になります。最近は訪問する機会がなく、昨年12月に訪問したのは何と10年以上ぶりでした。那覇近郊の各地区をご紹介します。
- 都市と建築のブログ vol.42: 沖縄:行逢りば兄弟 (Up&Coming No.122 盛夏号 PDF
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■都市と建築のブログ バックナンバー
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- 都市と建築のブログ vol.5 信濃大町:北アルプスの湧水を活かして (Up&Coming No.85 '10 新緑の号 PDF)
- 都市と建築のブログ vol.4 インド:タージマハル (Up&Coming No.84 '10 新春号 PDF)
- 都市と建築のブログ vol.3 シドニー:世界一の美港 (Up&Coming No.83 '10 新年の号 PDF)
- 都市と建築のブログ vol.2 台湾:最も訪れている国・地域 (Up&Coming No.82 '09 晩秋の号 PDF)
- 都市と建築のブログ vol.1 大阪:「水の都」を再び目指して。 (Up&Coming No.81 '09 秋の号 PDF)
都市とITとが出合うところ 第52回 CAADRIA 2018(1)
デジタル設計の学会
5月中旬、CAADRIA 2018(Computer Aided Architectural Design Research in Asia)に参加した。CAADRIAは建築・都市のデジタル設計に関する国際会議。年次大会がアジア・オセアニア圏で、世界中からの参加者を迎えて1996年から開催されている。欧州圏ではeCAADe、北米圏ではACADIA、南米圏ではSIGraDI、中東圏ではASCAAD、そして全世界を対象としてCAAD Futuresという姉妹学会がある。23回目を迎えたCAADRIA 2018は、中国北京・清華大学で開催された。
筆者自身、CAADRIAへは1997年からほぼ毎年参加している。近年の傾向として、コンピュータ設計、デジタル製作、BIM、VR、IoT、AIなどの発展が目覚ましく、建築分野での注目が大きくなっており、投稿論文数や参加者数が大幅に増えている。
CAADRIA 2018では、全文査読を通過した論文発表は113編。これに、ショートペーパー46編とポスター発表が加わった。日本からは、慶応大学、筑波大学、大阪大学の大学研究者・学生の他、竹中工務店からの研究発表があった。
論文審査委員会
CAADRIA 2018開催に向けて、論文審査委員長を仰せつかることになり、中国、シンガポール、香港、オーストラリアの委員と共に、昨年の年次大会後から準備を進めた。CAADRIAでは、論文審査委員会は、ホスト大学からは独立した組織である。これは、論文審査の中立性を確保するため、そしてホスト大学ごとの質のバラつきを避けるためである(最終的な論文集の印刷はホスト大学が担当)。主な仕事は、論文募集要項の作成、論文募集、論文投稿システムの構築、関連学会やSNSでのPR、アブストラクト審査、フルペーパー審査のための査読者の招聘と査読の依頼、論文集の前付けの作成、論文集の編集、著者からの質問への対応などである。今年は、質の髙い論文応募が増え、例年よりも数多く出版することになった。募集から出版に至る論文数は以下の通りである。論文のテーマを最後に示す。
大きな出来事を紹介しておきたい。中国は昨年から「一つの中国」政策を強めており、各分野に影響が出ている。今回、論文集を中国国内で出版するにあたり、①「Taiwan」を「Taiwan, China」と記載しなければならないこと、②台湾内の大学・組織名に「National」「Central」が付く場合にはこれらを削除しなければならないこと(すなわち大学名の変更)というものであった。
この問題が発覚したのは論文の各著者が版下原稿の校正を終えた本番1か月前であり、修正と解決を急ぐ必要があった。委員会内部での議論と台湾からの各著者とのやり取りを経て、論文集の出版物に、①の指摘に対しては国名・地域名を記載しないこと、②の指摘に対しては省略語で記載すること(例えば「National Chiao Tung University(国立交通大学)」は「NCTU」とする)で落ち着いた。一方、インターネット上の論文データベースへの登録(Web of Science, EI Compendex, Scopus, CuminCADなど)は、ホスト大学とは無関係であるため、「一つの中国」の影響を受けていない論文が登録される。このように出版間際まで気を抜くことができなかった。113編の論文はCuminCAD(http://papers.cumincad.org/)で「series:caadria year:2018」と検索するとアクセスできる。
学会期間中の様子
年次大会では、まず10テーマからなるワークショップが開催され、次いで国際会議が開催された。ザハ・ハディッド・アーキテクツのパトリック・シューマッハー氏がサプライズで登場するなど盛り上がりをみせた。参加者は300名を超えた。
個人的には、日頃、メールやSNSで準備を進めてきたCAADRIA仲間と再会できるのは大いなる楽しみである。互いの労をねぎらうと共に、学会の運営や研究活動について新たな企画を始めるきっかけになる。また、CAADRIAのコンセプトの一つは「アット・ホーム」。年次大会に初めて参加したメンバーや学生・若手にフレンドリーな学会である。
来年の年次大会・CAADRIA 2019は、2019年4月にニュージーランド・ウェリントンで開催される。
表1 CAADRIA2018論文テーマ(意味)
- Robotic Fabrication and Automation(ロボット製造と自動化)
- Computational Design Processes, Theory and Education(コンピュータ設計のプロセス、理論、教育)
- Generative, Algorithmic and Evolutionary Design(生成的、アルゴリズムに関する、進化的な設計)
- Additive Manufacturing and Optimization Processes(付加製造と最適化プロセス)
- Digital Fabrication and Construction(デジタル製作と建設)
- Augmented and Mixed Reality in Architecture(建築分野の拡張・複合現実)
- Mixed Reality and Interactive Environments(複合現実と相互作用環境)
- Virtual Reality and Interactive Environments(人工現実と相互作用環境)
- Human-Computer Interaction and Wearables(人間とコンピュータの相互作用とウェアラブル)
- Building Information Modelling and Interoperability(BIMと相互運用)
- Environmental Analysis - Adaptive Facades(環境解析 適応性のあるファサード)
- Computational Fluid Dynamics and Optimization(計算流体力学と最適化)
- BIG Data and Machine and Deep Learning(ビッグデータと機械・深層学習)
- BIG Data, Clustering and Information Processing(ビッグデータ、クラスタリング、情報処理)
- Adaptive Materials and Kinetic Architecture(適応材料とキネティック建築)
- Architecture and Urban Form and Analysis(建築・都市の形態と解析)
- Shape Studies and Design Synthesis(形状研究とデザインの合成)
- City Modeling and Thermal Comfort(都市モデリングと熱的快適性)
- Smart Built Environment and Internet of Things(スマート建築環境とIoT)
- Visual and Spatial Studies(視覚、空間研究)
PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1807machinami_FukudaFinal.pdf
書籍『サスティナビリティ・サイエンスとオーストラリア研究』が出版されました。
オセアニア出版社より、早稲田大学オーストラリア研究所「オーストラリア文化研究」シリーズの新刊『サスティナビリティ・サイエンスとオーストラリア研究』が出版されました。「地域性を超えた持続可能な地球社会への展望」をサブタイトルとして、持続可能な地域社会とオーストラリア研究をテーマに、〈地球システム〉〈社会システム〉〈人間システム〉を幅広く取り上げた一冊です。
執筆のご縁を頂き、第3部〈人間システム〉で「都市を元気にする仕掛け: サスティナブル・シティに向けて」と題して、メルボルン、近江八幡、境港の取り組みを書かせて頂いてます。
チラシの名前が微妙に間違えてますが(笑)、よろしくお願いします。
宮崎里司、樋口くみ子 編著、堤純、水野哲男、村上雄一、原田容子、多田稔、長友淳、塩原良和、福田知弘、佐和田敬司、小川晃弘 著
サスティナビリティ・サイエンスとオーストラリア研究:地域性を超えた持続可能な地球社会への展望、オセアニア出版社、ISBN 978-4-87203-115-7 C3036
在阪報道関係者と大阪大学との懇談会
先日は、在阪報道関係者と大阪大学との懇談会でした。本部の隣に新しく完成した共創イノベーション棟にて、約100名が参加されました。
当日は、西尾章治郎総長の挨拶の後、「建築・都市・環境MR:直感的理解と合意形成に向けて」と題して最新の研究成果を報告させて頂きました。鳥取県境港市で推進中の水木しげるロードリニューアルVR、景観検討MR、温熱環境検討MRなどの内容です。会場となった共創イノベーション棟2階会議室の温熱環境をCFDでシミュレーションし、多数の報道関係者がヘッドマウントディスプレイを装着されMR体験して頂きました。
会場の温熱環境をCFDシミュレーションして、MRで体験するデモを用意しました。リノベーションでの利用シーンを想定しています。
水木しげるロード・リニューアル計画プレゼン中。本年7月14日に完成です。
参加された記者さんにも温熱環境MRを体験して頂きました。平面スクリーンで眺めるのとはやはり違います。
会場は昨年完成した共創イノベーション棟 2階会議室。総長の発案で、麻の葉文様など古来の模様があしらわれています。
阪大グッズ:UHA味覚糖さんと開発した頭脳グミ、北摂焙煎所と開発した阪大オリジナルコーヒー、大阪観光局と制作したコングレスバッグ
大阪大学 工学部/工学研究科の広報などに掲載して頂きました!
●HP http://www.eng.osaka-u.ac.jp/ja/cgi/topics.cgi
●Facebook https://www.facebook.com/Engineering.OsakaUniversity/
●Instagram https://www.instagram.com/engineering_osakauniversity/
●Twitter https://twitter.com/Eng_Osaka_Univ
CAADRIA2018 @ 北京に参加しました。
5月中旬、CAADRIA2018 (Computer Aided Architectural Design Research In Asia)に参加してきました。CAADRIAは建築・都市設計分野のコンピュータ援用に関する学会です。アジア・オセアニア各国の大学がホストとなり、世界中からの参加者を迎え、毎年カンファレンスとワークショップを開催しています。23回目を迎えた今年は、中国北京・清華大学で開催されました。期間中、カンファレンスとワークショップが運営され、300名を超える参加がありました。
この一年間は、論文審査委員長を仰せつかりました。昨年7月より、論文募集、他の学会でのPR、梗概審査、128名の査読者の招聘、全文審査、最終的な論文集の出版と仕事が数多くあり、良い経験になりました。中国では昨秋ごろより、One China Policyの影響が強くなっており、出版段階においても最後まで気を抜くことができませんでした。
学会期間中は、表彰委員(優秀論文賞の選出)、選挙管理委員(新たな理事の選出)の仕事も仰せつかりました(なぜか、表彰状の筆耕まで 笑)。
CAADRIA運営メンバーとの再会
ハワイ大の先生、韓国の学生たちと。清華大学 建築棟にはCAADRIAの立看板がズラリ。
今回、D1朱阅晗 君がYoung CAADRIA Award(若手優秀賞)を受賞しました。受賞のニュースは、大阪大学 工学部/工学研究科の広報などに掲載して頂きました!
- HP http://www.eng.osaka-u.ac.jp/ja/cgi/topics.cgi
- Facebook https://www.facebook.com/Engineering.OsakaUniversity/
- Instagram https://www.instagram.com/engineering_osakauniversity/
- Twitter https://twitter.com/Eng_Osaka_Univ
- 環エネTopics http://www.see.eng.osaka-u.ac.jp/topics/media/2723.html
CAADRIA2018の論文発表は計113編。査読無しのショートペーパーが46編とポスター発表が加わりました。日本からの参加者として、慶応大学、筑波大学、大阪大学以外に、企業から竹中工務店の方が研究発表されていました。イノベーションが求められる時代、企業の方の研究発表が増えていくことが楽しみです。
- Abstract Submission(梗概投稿): 254
- Abstract Acceptance(梗概採用): 233
- Full paper Submission(フルペーパー論文投稿): 161
- Full paper Acceptance(フルペーパー論文採用): 117
- Publication(論文集に掲載): 113
論文募集テーマ(メインテーマ: Learning, Prototyping and Adapting)
- Robotic Fabrication and Automation
- Computational Design Processes, Theory and Education
- Generative, Algorithmic and Evolutionary Design
- Additive Manufacturing and Optimization Processes
- Digital Fabrication and Construction
- Augmented and Mixed Reality in Architecture
- Mixed Reality and Interactive Environments
- Virtual Reality and Interactive Environments
- Human-Computer Interaction and Wearables
- Building Information Modelling and Interoperability
- Environmental Analysis - Adaptive Facades
- Computational Fluid Dynamics and Optimization
- BIG Data and Machine and Deep Learning
- BIG Data, Clustering and Information Processing
- Adaptive Materials and Kinetic Architecture
- Architecture and Urban Form and Analysis
- Shape Studies and Design Synthesis
- City Modeling and Thermal Comfort
- Smart Built Environment and Internet of Things
- Visual and Spatial Studies
研究室の発表リストは下記です。
著者: Kazuya Inoue, Tomohiro Fukuda, Rui Cao and Nobuyoshi Yabuki
タイトル: Tracking Robustness and Green View Index Estimation of Augmented and Diminished Reality for Environmental Design - PhotoAR+DR2017 project
(環境設計のための拡張現実・隠消現実のトラッキングのロバスト性と緑視率推定機能の開発)
著者: Yuehan Zhu, Tomohiro Fukuda and Nobuyoshi Yabuki
タイトル: SLAM-Based MR with Animated CFD for Building Design Simulation
(建築物の設計シミュレーションのための動画CFDを有するSLAM型複合現実感システム)
113編の論文は、CuminCAD論文DBにも既に登録されています。その内、他の論文DB(Web of Science, EI Compendex, Scopus)にも掲載される予定です。
Cumincad : CUMINCAD Papers : Search Results
北京ではOGに出会うことができました。北京ダックのない北京料理店にて。数年前に研究室でドクターを取得され、今はコンサルタント企業で活躍されています。最近の中国ではApliPayかWeChatでしか支払えないお店が増えています。私のような外国人には困ったことです(涙)。
来年のCAADRIA2019は、2019年4月にニュージーランド・ウェリントンでの開催となります。また一年、頑張ろうと思います。
CAADRIA WeChat Group
都市とITとが出合うところ 第51回 水木しげるロード(4)
工事がはじまる
昨年の今ごろ、水木しげるロード・リニューアルプロジェクトの模様を3回に渡って紹介した(第36, 37, 38回)。あれ以来、リニューアル工事が急ピッチで進められている。大山に残雪が残る今年3月に訪問した(図1, 2)。
水木しげるロードは、毎年200万人を超える観光客で賑わっており、工事期間中に来訪者が減ってしまうことは避けたい。そこで、安全を第一に、観光客や沿道住民・商業者にできる限り配慮しつつ、工事期間中も楽しんで頂けるようなアイデアが盛り込まれた。
150体を超える妖怪ブロンズ像の多くは、今回のリニューアル工事によって、新たな位置に再配置される。そのため、基本的に工事箇所のブロンズ像のみを取り外し、工事完了箇所には速やかに再設置する方針とした。これによって、半数以上は水木しげるロードに設置されている状態となる。次に、一時的に取り外した妖怪ブロンズ像の扱いについてであるが、まず、水木しげるロードの玄関口である境港駅傍の駅前公園を再整備した。そして、一時的に取り外した妖怪ブロンズ像を駅前公園に集めて、「世界妖怪会議」をテーマにした期間限定の屋外展示を行った(平成29年夏~30年春)。これまで、延長800mの道路上に点在していたブロンズ像が集まる景色は貴重であり、迫力ものである。また、世界妖怪会議に集う妖怪ブロンズ像は、道路工事の進捗に伴って、入れ替わっていくため、訪問する時には果たしてどんなブロンズ像が集っているのか楽しみは増える。
また、リニューアル工事を円滑、安全に進めていくために「水木しげるロードリニューアル事業関連工事安全衛生協議会」が設立された。この協議会は、発注者(境港市)と工事受注者・工事業者間の連絡調整を図ると共に、工事期間中に水木しげるロードならではのイメージアップにも努めている。例えば、工事に必要でありながらも殺風景になりがちな、工事看板、カラーコーン、ヘルメットにはキャラクターやリニューアルのロゴマークを入れるなどの取り組みである(図3)。
完成に向けて、特筆すべき点を紹介しておこう。
- リニューアルに併せて、新たな18体のブロンズ像のスポンサーが公募された。平成29年4月に駅前公園で完成セレモニーが行われた。
- 新たな道路景観を創るために街路樹が一新されることになり、樹種には、妖怪のまちの雰囲気を一層盛り上げるべく「シダレエンジュ」が選ばれている。この樹形は、春から秋にかけて葉が傘のように生い茂り「妖怪の隠れ家」のようになる(図4)。
- 平成30年2月は例年以上の大雪となり工事が大幅に遅れた。地元の理解により、土曜日も工事を行うことになった。
- 境港駅前にリニューアル計画を紹介する看板が設置された。看板に描かれたQRコードにアクセスすると、VR(人工現実)で描かれたリニューアル後の姿を体験することができる(図5)。
- リニューアル計画・工事に関する情報を広く伝えるため「水木しげるロードリニューアルかわら版」を2016年9月より約2か月おきに発行している。これまでに号外を含めて10回発行された。
- 平成30年のゴールデンウィークは工事を一旦中断して歩行者天国とした。来訪者は、工事中にも関わらず、昨年の同時期と比べて、8%増となった(図6)。
- リニューアルの目玉の一つとして、夜間の演出照明の設置が進められている。特に、妖怪神社周辺では、多数の影絵照明が設置されており、これまでとは全く異なる夜の魅力づくりを目指している(図7)。
VRその後
平成29年度の境港市との共同研究では、平成28年度に制作した水木しげるロード・リニュアル計画のVRを用いて、計画の内容を市民・住民に対して普及啓発するためのVR体験会を何度も実施した。
施工の際には、完成図であるVR画面を見ながら、施工内容を確認し、もし必要であれば変更を行っている。施工業務の効率化にも寄与したようである。
また、古くなった本町アーケードが撤去され、新たなゲートが取り付けられることになった。そのため、VR仮想空間においても、本町アーケードを撤去し、設計中の新たなゲートの3次元モデルを制作して、リニューアル計画の最新案を確認できるようにした。先述の通り、平成28年度に水木しげるロード計画のVRモデルの全体を制作していたため、今年度はゲートの3次元モデルのみをVR仮想空間に挿入するだけで済んだため、短時間で全体像を確認することができた。
水木しげるロードは、平成30年7月14日、リニューアル・オープンを迎える。
都市とITとが出合うところ 第50回 情報シンポ
学会、日本建築学会
IT(情報技術)革命のけん引役となったインターネットが広く使われるようになって20年以上が経ち、スマホの圧倒的な普及もあって、あらゆる活動がネットにつながった。最近、ビジネスの世界においては、AI(Artificial Intelligence)、ロボットなどによるデジタルトランスフォーメーションが注目されている。
学会とは、それぞれの学問分野で、学術研究の進展や連絡などを目的として、研究者を中心に運営される団体である。デジタル技術の発展のスピード、その影響の大きさを考えてみると、学会とは狭い意味の研究者やその卵が集うだけでなく、企業家や実務者が最先端の考えや技術を収集したり、多様な人々が交流する場として機能していくものであろう。よって、研究機関に限らず、企業や行政のトップや実務担当者が参加していることはよく見られる光景である。
日本建築学会には、材料施工、構造、建築歴史・意匠、防火、建築社会システム、環境工学、建築法制、建築教育、都市計画、建築計画、農村計画、海洋建築、情報システム技術、災害、地球環境の合計15からなる常置調査研究委員会が設置されている。日本のように幅広い分野が融合している建築学会は世界的にも珍しいようである。このうち、情報システム技術委員会は、情報化時代の建築・都市・社会ビジョン、建築生産流通システムの情報化技術、設計・コミュニケーションの高度化技術、建築分野のための情報・解析理論と応用に関する調査・研究を行っている。すでに、建築の各分野においても情報の扱いや情報技術を考慮する必要性から、情報技術に関する小委員会を設けている常置調査研究委員会はある。一方、情報システム技術委員会は、建築の各分野を横断的に俯瞰しながら先進的な情報システム技術を扱おうとする姿勢に特徴がある。
情報シンポ
情報システム技術委員会では、年に一度の大きなイベントのひとつとして「情報・システム・利用・技術シンポジウム(通称:情報シンポ)」を開かれている。第1回情報シンポは1979年に開催された(当時は「電子計算機利用シンポジウム」であった)。インベーダーゲームが大流行した頃である。以来、建築・都市の各分野を横断するITの新しい可能性を追求する場として毎年開かれており、近年では、コンピュテーショナル・デザイン、BIM(Building Information Modeling)、IoT(Internet of Things)、AIをはじめとする、最先端の研究開発、応用事例を発表すると共に、参加者が交流する場として機能している。
昨年12月に行われた情報シンポ2017は第40回目に相応しいテーマ「バック・トゥ・ザ・フューチャー:次の40年へ」の下、基調講演4題、情報システム技術委員会傘下の小委員会による4つのオーガナイズドセッション、76題の論文・報告部門の研究発表が2日間に渡り行われた。基調講演者とそのタイトルは以下の通りである(図1, 2)。
- MITメディアラボ副所長 タンジブル・メディア・グループ・ディレクター 石井裕 教授「独創・協創・競創の未来:タンジブル・ビットからラディカル・アトムズへ」
- 東京大学 大学院情報理工学系研究科 廣瀬通孝教授「VR2.0の世界」
- 日建設計 都市開発部 主管 福田太郎 氏「都市のアクティビティを豊かにする情報の可能性」
- FunLife 代表取締役 COO・CFO 黄木桐吾 氏「AR技術がもたらす可能性」
情報シンポ2017当日は、大学の研究者、学生、建設会社、設計事務所、コンサルタント、行政、メーカー、IT企業などから多数の参加者が一堂に会した(図3, 4)。運営に際して、特別後援1社、協賛5社の協力を得ることができた。
学会参加の副産物?
情報シンポに限らないが、学会は、社会人と学生が出会う場として捉えることもできる。特に発表の場は、ライブでありリアルでもある。社会人の発表を学生が聴講する。学生は、その企業の最新成果を直に聴くことができる。企業のホームページやパンフレットでは得られない、リアルさを味わえる。逆に、学生の発表を社会人が聴講する。社会人は、学生の研究推進力、論理的思考力、プレゼンテーション力、質疑応答での対応力を直に知ることができる。
ライブの世界では、その場での対応力が求められ、事前準備なんぞ役に立たないこともある。リアルの世界では、見せたい箇所、いいところだけを見せられるわけではない。よって、感動を生む半面、落胆を生む可能性もはらんでいるわけであるが、最近のインターネットの世界では最適化が進められており、若者がライブやリアルを通じてホンモノを求めているのも確かである。
おわりに
今年の情報シンポ2018は、12月6日・7日に開催される。公式HP( http://aijisa2018.org/ )は先日立ち上がった(図5)。皆様からの論文・報告投稿(7月13日〆切)と参加をお願いしたい。最後に基調講演の概要を紹介しておこう。
現在、第3次AIブームの様相があり、大学を含む建築業界でもAIとロボットの台頭により、建築家や構造家の職能までも大きな影響を受ける可能性があるのではないか、と懸念する声が多い。
山田誠二先生(国立情報学研究所・総合研究大学院大学 教授)には、『人とロボットの<間>をデザインする』HAI(ヒューマンエージェントインタラクション)について講演いただく。人工知能やロボット技術で職業が奪われると昨今いわれていることについて、またIoTやビックデータは、これからどのようになっていくのかについて講演いただく。
松井龍哉様(フラワー・ロボティクス株式会社代表取締役社長/ロボットデザイナー)には、ロボットデザイナーの視点から、AIとロボットの発展により建築・都市がどのように変容していくのかを講演いただく。
AIとロボット、人間が各々の得意分野を相互に補うことが重要となってくると言われる。建築界では、AIを活用するためにどのような取り組みが必要となってくるのか、藤村龍至先生(東京藝術大学准教授/RFA主宰)のコーディネイトにより、ディスカッションしていただく。
PDF: http://y-f-lab.jp/fukudablog/files/1805machinami_FukudaFinal.pdf